俳句

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ひとりきいてゐてきつつき  種田山頭火 
雀らも真似してとぶや渡り鳥  小林一茶 
大風に傷みし木々や渡り鳥  河東碧梧桐 
日にかかる雲やしばしの渡鳥  松尾芭蕉 
小鳥来る音うれしさよ板びさし  与謝蕪村 
七草や露の盛りを星の花  上島鬼貫 
七くさや酢味噌遁れて秋の花  池西言水 
藤袴この夕ぐれのしめりかな  斯波園女 
行く秋のなほ頼もしや青蜜柑  松尾芭蕉 
花蓼にたわわなるかな青蜜柑  富安風生 
老の眼の僅かにたのし青蜜柑  百合山羽公 
青蜜柑おのが青さに青ざめて  後藤比奈夫 
蓑虫の音を聞きに来よ草の庵  松尾芭蕉 
海中や鰯貰ひに犬も来る  小林一茶 
鰯やく煙とおもへ軒の煤  室生犀星 
鰯船火の粉散らして闇すすむ  山口誓子 
鰯売る坂逆光に照り出さる  角川源義 
霜をかぬ三笠のかげや神の菊  各務支考 
銭百のちかひ出来たならの菊  広瀬惟然 
菊の香や庭に切たる履の底  松尾芭蕉 
おのが葉に月おぼろなり竹の春  与謝蕪村 
唐門の赤き壁見ゆ竹の春  高浜虚子 
京といへば嵯峨と思ほゆ竹の春  角田竹冷 
紅葉より瀧ちる谷間谷間かな  正岡子規 
関照るや紅葉にかこむ箱根山  小西来山 
まぎるゝや笠も紅葉も雨の音  夏目成美 
暫くは雑木紅葉の中を行く  高浜虚子 
落ち合うて川の名かはる紅葉かな  大谷句仏 
とある日の銀杏もみぢの遠眺め  久保田万太郎 
紅葉焚くことも心に本を読む  山口青邨 
滝の中つと流れ落つ紅葉あり  松本たかし 
たゞ忍べ燃ゆる紅葉の夕冷えは  中村草田男 
杉の上に馬ぞ見えくるむら紅葉  宝井其角 
今日の別れ心の波に紅葉散る  栗田樗堂 
暮るゝ日に尾上の紅葉紛れけり  藤原保吉 
ひよろひよろと猶露けしや女郎花  松尾芭蕉 
雨風の中に立ちけり女郎花  小西来山 
引袖は尾花にありて女郎花  横井也有 
我ものに手折れば淋し女郎花  大島蓼太 
女の香放ちてその名をみなへし  稲垣きくの 
反りかへる程哀れなり女郎花  夏目成美 
女郎花都離れぬ名なりけり  井上士朗 
硯かと拾ふやくぼき石の露  松尾芭蕉 
新米の其一粒の光かな  高浜虚子 
新米のまだ艸の実の匂ひ哉  与謝蕪村 
新米の膳に居るや先祖並み  小林一茶 
馬わたす舟にこぼるるやことし米  高井几董 
鉢の子ににへたつ粥や今年米  炭太祇 
山里や杉の葉釣りてにごり酒  小林一茶 
老の頬に紅潮すや濁り酒  高浜虚子 
藁の栓してみちのくの濁酒  山口青邨 
石黙し霜また声を呑むらしも  相生垣瓜人 
里人のわたり候か橋の霜  西山宗因 
からからと折ふしすごし竹の霜  松尾芭蕉 
馬道や庵をはなれて霜の屋根  向井去来 
霜踏んで跡に見えたる朽葉かな  杉山杉風 
衛士の火もしらじら霜の夜明けかな  与謝蕪村 
両袖に泣子やかこふ閨のしも  久村暁台 
南天をこぼさぬ霜の静かさよ  正岡子規 
霜降れば霜を楯とす法の城  高浜虚子 
霜の木や実の紅を輝ける  松根東洋城 
鴨鳴けり霜燦爛の多摩郡  水原秋桜子 
叶えばぞ陽につぼめる霜の花  上島鬼貫 
大霜や遠望は火もみすぼらしく  大野林火 
霜つよし蓮華とひらく八ケ岳  前田普羅 
霜どけのまいあさ桑を濡らしたる  長谷川素逝 
三日月をしづめし木より霜の声  皆吉爽雨 
寄生木や静かに移る火事の雲  水原秋桜子 
火事を噴きあげては町の密集す  百合山羽公 
風邪人に玻璃戸の日影移りゆく  嶋田青峰 
風邪ごゑを常臥すよりも憐れまる  野澤節子 
柚子ひとつ描きて疲る風邪のあと  水原秋桜子 
紅鼻の感冒の神父と坂登る  山口誓子 
土塊の日当るみつつ風邪ごこち  石川桂郎 
白日にたまむしとべる緋鯉かな  原石鼎 
鴫たってなきものを何よぶことり  大淀三千風 
十団子も小粒になりぬ秋の風  森川許六 
苗代の水にちりうく桜かな  森川許六 
鰤起し杉山檜山色褪せぬ  阿波野青畝 
流人墓地みな壊えてをり鰤起し  石原八束 
鰤起しはたして鳴るや夜籾摺り  金尾梅の門 
一人去って三日の夕浪しづかなり  大伴大江丸 
松とりて世ごころ樂し小正月  高井几董 
溶岩が花なり冬の桜島  鷹羽狩行 
手袋で拝む虚空蔵菩薩かな  石寒太 
五つ六つ茶の子にならぶ囲炉裏哉  松尾芭蕉 
半四郎二十日正月しに来り  高浜虚子 
冬ぐもりひさびさ湯にいり金を借る  種田山頭火 
鰤荷ふ中間殿にかくれけり  宝井其角 
ころがされ蹴られ何見る鰤の目は  加藤楸邨 
いのちかけて待ちゐし鰤や鰤来る  上村占魚 
ゆかしやと見れば見えけり除夜の梅  三浦樗良 
除夜零時過ぎてこころの華やぐも  山口誓子 
おもしろう松風吹けよ除夜の闇  松岡青蘿 
年の夜の鰤や鰯や三の膳  向井去来 
年の夜やめざめて仰ぐ星ひとつ  石田波郷 
月下美人力かぎりに更けにけり  阿部みどり女 
北上の空に必死の冬の蝶  阿部みどり女 
何心つかぬに土手の菫かな  神野忠知 
兎に角に春は来るなり札納  竹久夢二