川崎展宏 ●
春浅し寄せくる波も貝がらも 季すり寄りし犬の肋や五月闇 季籐椅子が廊下にありし国敗れ 季水換ふる金魚をゆるく握りしめ 季新しき柄杓が置かれ著莪の花 季幻の平等院やきりぎりす 季はなびらを風にたゝまれ酔芙蓉 季湯の街は端より暮るる鳳仙花 季ふつくりと桔梗の蕾角五つ 季空をゆく鏡のごとき冬至の日 季人影は見えずどんどと雪おろす 季木の葉髪はがねの音を立にけり 季臘梅へ帯のごとくに夕日影 季国生みのはじめの島の雑煮餅 季実朝忌波の上なる女下駄 季せりなづな御行といひて声の止む 季晴れぎはのはらりきらりと春時雨 季「大和」ヨリヨモツヒラサカスミレサク 季天の川水車は水をあげてこぼす 季冬すみれおのれの影のなつかしき 季藪入に生れ落ちけり遠眼鏡 季夕菅は胸の高さに遠き日も 季桜桃の花の静けき朝餉かな 季
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