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川崎展宏 

春浅し寄せくる波も貝がらも 
すり寄りし犬の肋や五月闇 
籐椅子が廊下にありし国敗れ 
水換ふる金魚をゆるく握りしめ 
新しき柄杓が置かれ著莪の花 
幻の平等院やきりぎりす 
はなびらを風にたゝまれ酔芙蓉 
湯の街は端より暮るる鳳仙花 
ふつくりと桔梗の蕾角五つ 
空をゆく鏡のごとき冬至の日 
人影は見えずどんどと雪おろす 
木の葉髪はがねの音を立にけり 
臘梅へ帯のごとくに夕日影 
国生みのはじめの島の雑煮餅 
実朝忌波の上なる女下駄 
せりなづな御行といひて声の止む 
晴れぎはのはらりきらりと春時雨 
「大和」ヨリヨモツヒラサカスミレサク 
天の川水車は水をあげてこぼす 
冬すみれおのれの影のなつかしき 
藪入に生れ落ちけり遠眼鏡 
夕菅は胸の高さに遠き日も 
桜桃の花の静けき朝餉かな 

春 川崎展宏全句集 [ 川崎展宏 ]
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