あなたなる夜雨の葛のあなたかな

あなたなる よさめのくずの あなたかな

あなたなる夜雨の葛のあなたかな「ホトトギス」大正15年(1926年)12月号に発表された芝不器男の俳句。「二十五日仙台に着く みちはるかなる伊予のわが家をおもへば」の前書きがある。東北帝国大学に通っていた頃の俳句であり、一時的に帰っていた故郷を離れ、仙台にたどり着いた時の俳句。
同郷でもある高浜虚子は、「この句は作者が仙台にはるばるついて、その道途を顧み、あなたなる、まず白河あたりだろうか、そこで眺めた夜雨の中の葛を心に浮かべ、さらにそのあなたに故国伊予を思ふ、あたかも絵巻物風の表現をとったのである。」と評している。不器男が全国に知られていく転機となった俳句である。

▶ 芝不器男の俳句