はるのうみ ひねもすのたり のたりかな
歴史の舞台で詠まれた春の有名句
俳諧古選(三宅嘯山編1763年)所収の与謝蕪村の句。誹諧金花伝(柏屋喜兵衛編1773年)には、「すまの浦にて」の前書きがある。「其雪影」(高井几董編1772年)では、春夏の部の頭に掲載される。
与謝蕪村の最も知られた句のひとつであり、「ひねもす」は「終日」、「のたりのたり」は擬態語でのんびりだらだらした様子を表す。詠まれた場所に関しては諸説あるが、誹諧金花伝に「すまの浦にて」とあるところから、和歌で有名な須磨の浦で詠まれたものと考えられる。
この数々の伝説を生んだ歴史の舞台で、蕪村は時間を感じることもなく、ただのんびりと海を眺めている。そこに現れたこの句は、一般的には春の陽気を写生したもののように捉えられているが、刹那に生きる人間と自然界の雄大さを比較したものなのかもしれない。
▶ 与謝蕪村の句
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