俳句が詠める街

根を張る土壌はそこになくても、酒を注げば花は咲く。是、場末に生きる騒客の、四季の巡りを知る処。

vol.1 蒲田|消えゆく昭和を映す街

蒲田の区民ホール「アプリコ」横の壁画
松竹キネマ撮影所跡は、区民ホール「アプリコ」となり、隣接するビルの壁面に、当時の面影が刻まれるのみ。それでも蒲田行進曲を口遊めば、かつては「春の街」だったんだなと、あらためて思う…(写真:壁画)

「蒲田行進曲」が発車メロディとなっているJR蒲田駅は、東京都区内の南限駅。昭和11年まで松竹キネマ撮影所があった映画の街も、映画館は令和元年までに全て閉館。現在は、世界への窓口として変貌を遂げようとしている。
 その最前線が、JR蒲田駅から東方徒歩15分の、京急蒲田駅周辺。京急蒲田駅は、空港線を含む重厚な三層構造となった。周辺では再開発が急速に進み、以前にはなかった華やぎが生まれつつある。
 ただ、その中で薄れて行くのが、モダン蒲田と呼ばれた、春を謳歌する雰囲気…

俳句でハイク|京急蒲田の街に過ぎ行く春を探して

 現在では労働者の街としてのイメージが強い蒲田の街だが、街中を散歩すると、いたる所に俳句素材が転がっている。

京急蒲田駅【俳句でハイク1 京急蒲田駅】
JR蒲田駅から15分歩いて、京急蒲田駅に到着。その異様な構造に驚嘆。2階・3階が乗車口になっており、到着する電車によっては、同じホームの同じ面の前後が使われる。わけが分からずあたふたしていると、菜の花色をした電車が入ってきて、カメラを構えた少年が「イエローハッピー」と言ってピースサイン。
空港線で羽田空港までは15分。

京急蒲田駅前商店街あすと【俳句でハイク2 駅前商店街あすと】
京急蒲田駅の駅前に、あすと(明日都)と名付けられた商店街がある。駅から西方へと200m伸びるこの商店街は、大田区初の全蓋式アーケードを持つ商店街である。飲食店や古レコード店が軒を連ねているが、この街の中程に「リビオ蒲田ザ・ゲート」という複合施設が、2022年に向けて建設中である。JR蒲田駅への通路といった感もあり、通行人のスピードが異様に速い。

羽根つき餃子の金春【俳句でハイク3 中華の名店「金春」】
駅からアーケードを50メートル程入ったところに、中華料理の名店「金春」がある。この店は、蒲田名物になっている羽付き餃子の名店で、蒲田餃子御三家に数え上げられる。驚くくらいコストパフォーマンスが良く、まさにせんべろ中華。それが、蒲田有数の名物というのだから、最高である。俳句を詠もうとする身には、「金秋」じゃないのかとツッコミたくもなるが。

柳通り【俳句でハイク4 柳通り】
金春の脇道からは、「柳通り」という風情のある飲み屋街になっている。日本初の自動車教習所「日本自動車学校」跡地に、アーケードを挟んだ向こう側にあった花街の客を吸い込むようにして拡大した街だという。ただ、駅前の再開発により多くの店が撤退し、現在は20店余りのスナックや居酒屋が残るのみ。場末の雰囲気のある、独特の昭和感を漂わせている。

呑川【俳句でハイク5 呑川】
柳通りを抜けると呑川である。飲み屋街に寄り添って流れる川とでも言おうか。柳橋を渡れば公園もあって、酔った身体を涼ませるのにいい。前には桜並木があり、もうすこし早ければ、俳句に花筏を詠み込むことも出来ただろう。ただ、春の季語となるがどこかにあるのではないかと探してみたが、見当たらなかった。柳通りの「柳」は、花柳界からきたものか?

蒲田温泉【俳句でハイク6 蒲田温泉】
羽付き餃子と並ぶ蒲田の名物に「黒湯」。鶴見・川崎・蒲田あたり独特の泉質で、墨のような色をしている。しかし水キレも良く、身体がよくあたたまる。そんな黒湯で有名な蒲田温泉が、京急蒲田駅から南へ15分ほど歩いたところにある。少し酔いを醒まして浸かれば、温泉旅行気分を満喫できる。入湯料金470円。10時から24時まで、手ぶらで楽しむことのできる温泉だ。

 蒲田行進曲に「春の蒲田花咲く蒲田」と歌われる蒲田なら、簡単に春の俳句が見つかるだろうと思って歩き回った。ただ、現在の蒲田は変貌期にあり、かつてのモダンと呼ばれた雰囲気を汲み取ることは難しい。それよりもむしろ、労働者と下町工業の街として、熱さと汗を感じることの方が多かった。
 春も永遠に留まることはできない。今、晩春となり、次の季節がそこまで押し寄せている…
 そんなことを考えながら、ようやくひねりだした俳句がコレ。
「なんちゅうか やなきも霞む裏通り」(泰:これ狂句?)

華やかなりしひとときの 過ぐるを知らで居るみやこ
通り吹く風つよくして とほく背中のかすみゆく

もどり得ぬ道にあそぶや花と蝶 (

俳句が詠める街

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