名月や畳の上に松の影

めいげつや たたみのうえに まつのかげ

名月や畳の上に松の影雑談集(1692年其角刊)にある宝井其角の句。雑談集には下記のようにある。

一閑見月 更る夜の人をしづめてみる月に おもふくまなる松風のこゑ
 名月や畳の上に枩の影 角
難問花影秉月上欄干 此句に思ひ合する時は畳の上の松影春秋分明ならず夏の夜の涼しき躰にもかよふべきか 答テ春の月なるゆへ花欄干に上ルとは云り

併せて、其角の「おぼろとは松の黒さに月夜かな」の句も載せている。
「名月や畳の上に松の影」の句は、王安石の「夜直」にある「花影上欄干」にインスパイアされたもの。王安石は、宿直の寒い中にも春の気配を感じ、月の移動とともに花影が欄干に移ったことを歌っている。対して其角は、畳の上でくつろいでいる中にこの句を得たと見える。洒落風を生み出した其角の真骨頂。

画像は、月岡芳年の「月百姿」にある「名月や畳の上に松の影」(明治18年:国立国会図書館所蔵)。


▶ 宝井其角の句



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