鳥わたるこきこきこきと罐切れば

とりわたる こきこきこきと かんきれば

オノマトペを使った有名句

「瘤」(1950年)所収の秋元不死男の俳句。終戦直後の昭和21年(1946年)に詠まれた。季語は「鳥わたる」で秋。

新興俳句弾圧事件で1943年2月までの2年間投獄されていた不死男の境遇に重ねて鑑賞されることが多く、不死男自身も「敗戦のまだ生々しく匂う風景の中で、私は解放された明るさを噛みしめながら渡り鳥を見上げ、コキ、コキ、コキと罐を切った」と述べている。
「渡り鳥」を自由の象徴と捉え、幽閉されていた日のことを「罐」に見る。解放されるときの音が「こきこきこき」であり、その鈍い音の中には、喜び以外の感情も含まれていて複雑である。

▶ 秋元不死男の俳句