島根県の俳句旅

11月の俳句旅|初冬の風は出雲大社へと向かう

旧暦十月の神無月は、出雲で神在月となる。この月、神渡しに乗って出雲大社に八百万の神が集い、大国主のもとで神議(かみはかり)を行う。

出雲路の神在月となりしかな 村山古郷

ご当地季語と御当地俳句現在では10月の異称のようになっているが、出雲大社の行事は旧暦にのっとってとり行われるために、例年ならば神在祭は11月中旬となる。祭りといえば華やかなものを想像しがちであるが、神在祭は粛々と進められる。
また、神在祭は出雲大社だけの祭りではなく、出雲地方全体で神々を迎える行事がとり行われるために独特の空気が漂う。出雲地方を旅するなら、厳しい冬を迎える前のこの時期がいい。最近では門前のご縁横丁も賑わい、出雲名物の割子そばや、出雲が発祥ともされるぜんざい餅もおいしく頂くことができる。俳句を詠むにも、自然が多い出雲大社周辺は、冬紅葉がとてもきれいだ。

【出雲大社】
「因幡の白兎」などで知られる大国主命を祀る神社で、現在では縁結びの神として広く信仰されている。かつての本殿は48mの高さを誇っていたとされ、境内から巨大な宇豆柱が発掘された。それは、荒神谷遺跡の発掘物や加茂岩倉遺跡の銅鐸などとともに、隣接する島根県立古代出雲歴史博物館で展示されている。

【割子そば】
日本三大蕎麦の一つ「出雲蕎麦」といえば、割子そば。通常は三段の割子で提供され、蕎麦の実を皮ごと挽いた、黒くて香りが強い麺が特徴。神在祭のころ新蕎麦が出るため、出雲では「神去出蕎麦」などと呼んで神々を見送る。出雲大社門前では、老舗として「荒木屋」などが有名。

【ぜんざい餅】
和菓子の名店が多い出雲地方の、新たな名物が「ぜんざい餅」。しかしその歴史は古く、江戸時代の文献にも出雲発祥の記述があったりする。その語源は「神在餅」にあるとされ、神在祭の最後に神々に供されるものであった。

出雲大社で俳句を詠むなら竹野屋旅館

【竹野屋旅館】
出雲大社の門前の老舗旅館「竹野屋旅館」は、シンガーソングライター竹内まりや氏の実家として知られているが、皇室や著名人の宿泊も多い木造の名旅館である。利用者の評価も高く、大社にも近いことから、早朝の清らかな空気に包まれる貴重な体験ができる。言霊を探し歩くには絶好の旅館である。

この日本酒で俳句 出雲大社編

島根県の俳句旅【十旭日|純米吟醸 佐香錦55】
出雲大社の御神酒八千矛を醸造しているのが、出雲市の旭日酒造である。旭日酒造の「十旭日」は、今や美味い日本酒として全国区の人気を誇っている。そんな中でも、出雲に来たからには地元の酒米「佐香錦」を使った日本酒を飲みたい。この佐香錦は、出雲の酒の神様である佐香神社に銘を頂いたものである。