安住敦 ●
万愚節に恋うちあけしあはれさよ 季涅槃図に束の間ありし夕日かな 季啄木忌いくたび職を替へてもや 季亀鳴くや事と違ひし志 季雨の日は雨の雲雀のあがるなり 季鳥帰るいづこの空もさびしからむに 季蜆舟少しかたぶき戻りけり 季白つつじこころのいたむことばかり 季葱坊主子を憂ふればきりもなし 季蟾蜍さびしき顔をして寄り来 季門川にうつる門火を焚きにけり 季おもかげのうするゝ芙蓉ひらきけり 季落葉明りに岩波文庫もう読めぬ 季輪飾や一つ構へに子の所帯 季数の子や一男一女大切に 季初日記一齟齬すでにありにけり 季初電車子の恋人と乗り合はす 季初釜のはやくも立つる音なりけり 季子と頒つ秋のともしの手くらがり 季しぐるるや駅に西口東口 季春の驟雨たまたま妻と町にあれば 季かの夫人蜜柑むく指の繊かりしが 季草萌やちゝはゝ一つ墓に栖み 季夕蛙いもうと兄を門に呼ぶ 季水を出て家鴨寄り添ふ暮春かな 季鬱々と蜜柑の花が匂ふならずや 季てんと蟲一兵われの死なざりし 季友の訃に急くや白鷺も同じ向き 季泥鰌鍋離反のこころ読めにけり 季そぞろ寒兄妹の床敷きならべ 季
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