佐藤鬼房 ●
影ゆれて花いちもんめ草の餅 季生まぐさき羅漢に出会ふ溽暑かな 季むきだしの岩になりたや雷雨浴び 季絵日記に幼な手の藍原爆忌 季秋暑しわれを死なしむ夢いくたび 季星飛べり空に淵瀬のあるごとく 季齢来て娶るや寒き夜の崖 季大寒の餓鬼のやうなる細喉 季風光る海峡のわが若き鳶 季毛皮はぐ日中桜満開に 季陰に生る麦尊けれ青山河 季秋鯖の大の一尾を値切りゐる 季人間になりそこねたる比目魚かな 季いつ孵る薄明り黄のはららごよ 季一番草岩の貌して田をあがる 季奢りながき夕焼透いて不作の田 季
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