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加倉井秋を 

山繭の夕営みの白ほのと 
待つ明るさ夏うぐひすの次の声 
妻病みて髪切虫が鳴くと言ふ 
十薬のまぬがれ難き十字咲く 
晩年や黒穂の黒に指染まり 
大根蒔く短き影をそばに置き 
秋燕や雲にのみ日の当りゐる 
除夜守る火紺地金泥なせりけり 
初雀飛び翔つことをすこしする 
折鶴のごとくに葱の凍てたるよ 
花茣蓙に母の眼鏡がおいてある 
家に隅ありて捕虫網たてかける 
通るときいつも急きをる葭簀かな 
此の岸の淋しさ鮪ぶち切らる 
雨季をはる垂木に鎌をさせしまゝ 
線路越えつつ飯饐える匂ひせり 
雑巾刺す十字ぎつしり夜の緑 
プラタナスの花咲き河岸に書肆ならぶ 
柊咲くあとはこぼるるより他なく 
母となる日の近き重ね着へたすき 
冬の雁夕空束の間にかはる 
司書若し和服に慣れず事務始 

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