加倉井秋を ●
山繭の夕営みの白ほのと 季待つ明るさ夏うぐひすの次の声 季妻病みて髪切虫が鳴くと言ふ 季十薬のまぬがれ難き十字咲く 季晩年や黒穂の黒に指染まり 季大根蒔く短き影をそばに置き 季秋燕や雲にのみ日の当りゐる 季除夜守る火紺地金泥なせりけり 季初雀飛び翔つことをすこしする 季折鶴のごとくに葱の凍てたるよ 季花茣蓙に母の眼鏡がおいてある 季家に隅ありて捕虫網たてかける 季通るときいつも急きをる葭簀かな 季此の岸の淋しさ鮪ぶち切らる 季雨季をはる垂木に鎌をさせしまゝ 季線路越えつつ飯饐える匂ひせり 季雑巾刺す十字ぎつしり夜の緑 季プラタナスの花咲き河岸に書肆ならぶ 季柊咲くあとはこぼるるより他なく 季母となる日の近き重ね着へたすき 季冬の雁夕空束の間にかはる 季司書若し和服に慣れず事務始 季
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