俳句

蕗のたうおもひおもひの夕汽笛

ふきのたう おもひおもひの ゆうきてき

蕗のたうおもひおもひの夕汽笛中村汀女の第1句集「春雪」(1940年3月)所収の句。一説には、横浜の野毛山公園で詠まれた句とも。ゆえにその汽笛は、足下を走る京浜電鉄や、横浜港の船のものが折り重なったものかもしれない。
蕗の薹が詠み込まれているから、季節は初春。これから伸びゆくものと、働き続けてきたものが一日の終わりに発する咆哮。

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野毛山公園の句碑(神奈川県横浜市)

蕗のたうおもひおもひの夕汽笛動物園もある野毛山公園に、この句碑がある。
野毛山公園は、関東大震災で被災した横浜の豪商跡や、旧野毛山貯水池を公園として整備し、大正14年(1925年)に完成した。そこに昭和48年(1973年)、汀女が創刊・主宰した「風花」が句碑を建立。

横浜との縁は、大蔵省官吏を夫に持つ中村汀女が、昭和5年(1930年)に西戸部町の税関官舎に移ったところから。昭和7年(1932年)に杉田久女の俳誌「花衣」に投稿することで、若き頃「ホトトギス」で親しんだ句作を再開しているから、横浜は、汀女俳句の再出発の地である。
並び立つ添碑には次のようにある。

文化功労者 日本芸術院賞受賞者
中村汀女先生は明治三十三年熊本に生れ 江津湖畔に育ち 高浜虚子に師事 昭和二十二年俳誌「風花」を主宰 句集「紅白梅」ほか多数の著書あり 昭和五年より西戸部税関官舎に住まわれ 良き時代の横浜をこよなく愛され幾多の名句を詠まれた ここにゆかりの句を戴き 風花横浜支部一同これを句碑として此処に残す
昭和四十八年五月三十日

【撮影日:2019年3月29日】

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