俳句

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中村汀女 

秋草のすぐ萎るるをもてあそび 
たんぽぽや日はいつまでも大空に 
春宵の駅の時計の五分経ち 
あひふれしさみだれ傘の重かりし 
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る 
とゞまればあたりにふゆる蜻蛉かな 
橋に聞くながき汽笛や冬の霧 
靴紐をむすぶ間も来る雪つぶて 
次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ 
初刷に厨のものは湯気立つる 
わが影のすぐよぎりけり鳥総松 
ひとり摘む薺の土のやはらかに 
さし寄せし暗き鏡に息白し 
外にも出よ触るるばかりに春の月 
秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな 
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 
抱く珠の貝のあはれを聞く冬夜 
突風や算を乱して黄水仙 
真上なる鯉幟まづ誘ひけり 
梅干して人は日蔭にかくれけり 
立秋の雨はや一過朝鏡 
霧見えて暮るゝはやさよ菊畑 
蕗のたうおもひおもひの夕汽笛 
北風の奪へる声をつぎにけり 
わが部屋に湯ざめせし身の灯をともす 
真円き夕日霾なかに落つ 
黒板の遅日の文字の消し残し 
春暁や今はよはひをいとほしみ 
山こむる霧の底ひの猫の恋 
竈猫打たれて居りし灰ぼこり 
灯虫さへすでに夜更のひそけさに 
叩きたる氷の固さ子等楽し 
夕蜘蛛のつつと下り来る迅さ見る 
帰るべき細道見えて夕櫻 
横浜にすみなれ夜ごとの夜霧かな 
月に刃物動かし烏賊を洗ふ湖 
初富士にかくすべき身もなかりけり 
吾子の眼の即ちたのしお白酒 
ガソリンと街に描く灯や夜半の夏 
菖蒲湯の香のしみし手の厨ごと 
地下鉄の青きシートや単物 
単帯或る日は心くじけつゝ 
沖の帆にいつも日の照り紅蜀葵 
荒波の凪ぎし夜を借る夏布団 
夜濯ぎの更け来し水の澄みわたり 
おはぐろの舞ふとも知らで舞ひ出でし 
棕梠の花港の風も忘れじよ 
ここにして天草恋し樟若葉 
なでしこや人をたのまぬ世すごしに 
長雨の降るだけ降るや赤のまま 
歳晩の月の明さを身にまとひ 
雪投げをして教会に集り来 
慈善鍋晝が夜となる人通り 
春寒や出でては広く門を掃き 
まどろみの覚め白さびし花りんご 
ぼうぼうと燃ゆる目刺を消しとめし 

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