いっぺんの ぱせりはかるる だんろかな
不器男句集所収の芝不器男の絶筆。死の2カ月前となる、昭和4年12月25日に詠まれた、句会での俳句。この句会は、病床の不器男を慰めるために、「天の川」主宰・吉岡禅寺洞や主治医の横山白虹らによって開かれた。この時、「大舷の窓被ふある暖炉かな」「ストーブや黒奴給仕の銭ボタン」の俳句も遺す。
現代においては、適齢期を過ぎても結婚出来ずにいる男を指す隠語にもなっている「パセリ」。不器男に、そのような取り残されたような思いがあったかは定かでないが、皿の上に最後まで残ったパセリを、暖炉の中に放り込む様子を切り取ったか。パセリの緑と火の赤で、クリスマスカラーを成すのは偶然か。諦めと祈りが同居しているような、不思議な雰囲気を感じ取る。
▶ 芝不器男の俳句