俳句

巫女下るお山は霞濃くなりて

みこくだる おやまはかすみ こくなりて

巫女下るお山は霞濃くなりて昭和16年(1941年)、山口青邨は秩父の俳人・有本銘仙らの案内で三峯神社に参拝し、宿坊に一泊した。この句は、「山門の春の焚火のかぐはしく」などとともに詠まれた句。
穢れを嫌う聖域ゆえに、「巫女下る」という言葉には悲しみがある。現代ならば、緋袴をたたみ身ぎれいにした女性が、町に下りていくバスに乗り込むという情景になるかも知れぬが、はるか昔には、それが死を意味したこともあっただろう。

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三峯神社の句碑(埼玉県秩父市)

巫女下るお山は霞濃くなりて山口青邨が幾度か訪れたという三峯神社は、関東一のパワースポットとの評判を呼び、参拝客で賑わっている。特に、白い御守の特別頒布がある毎月1日は、麓からの渋滞で、交通が完全に麻痺してしまう(苦情により、平成30年6月1日から休止)。

三峯神社は、連歌の祖でもあるヤマトタケルが東征の折、上野国から碓氷峠に向われる途中で、伊弉諾尊・伊弉册尊を祀った場所にある。狼の狛犬と三ツ鳥居があることで有名で、斎藤茂吉や野口雨情の歌碑などもあり、見どころが多い。
山口青邨の句碑は、広大な境内の小高い丘の上に、昭和61年9月28日「夏草」埼玉県支部が建立。中央にそびえるヤマトタケル像を見上げるように歌碑や句碑が配置されているが、その内のひとつ。説明碑と並び立ち、異彩を放っている。
【撮影日:2016年10月2日】

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