俳句

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山口青邨 

咲きみちて庭盛り上がる桜草 
人も旅人われも旅人春惜しむ 
みちのくの町はいぶせき氷柱かな  (ホトトギス)
ある日妻ぽとんと沈め水中花 
はなやかに沖を流るる落椿 
みちのくの雪深ければ雪女郎 
外套の裏は緋なりき明治の雪 
祖母山も傾山も夕立かな 
われが住む下より棺冬の雨 
銀杏散るまつただ中に法科あり 
ゼンマイは椅子のはらわた黴の宿 
たんぽぽや長江濁るとこしなへ 
ももいろの羽を帽子に復活祭 
ともしびにうすみどりなる春蚊かな 
蕗の薹傾く南部富士もまた 
蟷螂の如き裸婦見て二科を出づ 
火美し酒美しやあたためむ 
待つことは長し栗の実落つることも 
いただきに金の雨ふり葉鶏頭 
紫苑にはいつも風あり遠く見て 
その前をきれいに掃いて飾売る 
雑炊もみちのくぶりにあはれなり 
みちのくの乾鮭獣の如く吊り 
実朝の歌ちらと見ゆ日記買ふ 
鴛鴦の沓波にかくるることもあり 
初空の藍と茜と満たしあふ 
太鼓橋われらが占拠初写真 
万歳の遠ければ遠き世のごとく 
梅の精狂ふ舞初うつくしく 
古き宮の宝舟なり買ひにけり 
紅顔の人等つどへり実朝忌 
ほんだはら黒髪のごと飾り終る 
コスモスの君と言はれし人思ふ 
巫女下るお山は霞濃くなりて 
万両のひそかに赤し大原陵 
さざなみの絹吹くごとく夏来る 
雨どどと白し菖蒲の花びらに 
鼻汁溝泥のごとくかなしや夏の風邪 
敗れたりきのふ残せしビール飲む 
菊咲けり陶淵明の菊咲けり 
やがて帰る燕に妻のやさしさよ 
旅人の雁をかぞへて日をかぞふ 
山の日の中天に来し葡萄園 
山門の春の焚火のかぐはしく 
松島の松に雪ふり牡蠣育つ 
わが頬にふれてあたたか枯芒 
石焼藷銀の匙もてすくへるよ 
啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる 
一片の落花の影も濃き日かな 
願ぎごとのあれもこれもと日は永し 
雨蛙ねむるもつとも小さき相 
氷店秩父の石を飾り立て 
紅葉焚くことも心に本を読む 
藁の栓してみちのくの濁酒 
雪ふれば女子大もつくる雪達磨 
虹のごとくつらなることも熱帯魚 
帆立貝すなどる舟の帆を立てて 
啓蟄の虫より早く起き出でて 
みちのくの淋代の浜若布寄す 
地球儀と南瓜と柿本人麿と 
えごの花遠くへ流れ来てをりぬ 
玉虫の羽のみどりは推古より 
書屋古りうどんげも花ざかりにて 
老の身をサルビヤの火の中におく 
仲秋を花園のものみな高し 
御嶽の雪バラ色に鳥屋夜明 
秋茗荷ざくざく刻むいさぎよし 
藤袴とてそだて来し蕾もつ 
中庭に雨を集めて秋海棠 
南部富士けふ厳かに頬冠り 
連翹の枝の白さよ嫋さよ 
アカシヤの花こぼしつつ時を告ぐ 
人親し林檎の花は枝低く 

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