春 click ⇒ ≪解説≫
枕べにことしの春は立ちにけり 日野草城春や昔十五万石の城下哉 正岡子規(寒山落木)●バスを待ち大路の春をうたがはず 石田波郷(鶴の眼)●砂山に蛸壺積まれ浜の春 浅野余里女裏戸より春に来る鬼のぞきおり 酒井弘司鳥のほかなにも来はせぬ辻の春 宇多喜代子麗しき春の七曜またはじまる 山口誓子良寛の一書を膝に春の旅 今川凍光行法の春のひかりに飯の湯気 中岡毅雄籠の鳥春よ春よと告げにけり 白川京子大虚子を想へば春の飛行船 大牧広複写機の春の広告とめどなし 和田悟朗鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春 宝井其角夜半の春なほ処女なる妻と居りぬ 日野草城(ミヤコホテル)妻の額に春の曙はやかりき 日野草城(ミヤコホテル)発句也松尾桃青宿の春 松尾芭蕉●女身仏に春落剝のつづきをり 細見綾子今日何もかもなにもかも春らしく 稲畑汀子春昼の指とどまれば琴も止む 野澤節子長持に春かくれゆく衣がへ 井原西鶴目出度さも人任せなり旅の春 井上井月みづうみの水がうごいてゐて春に 今井杏太郎ポストまで歩けば二分走れば春 鎌倉佐弓山門の春の焚火のかぐはしく 山口青邨飛梅や軽々敷くも神の春 荒木田守武庭訓は春のはじめの試筆かな 池田正式みどり子を頭巾でだかん花の春 斯波園女手をのべて折りゆく春の草木かな 斯波園女なき名きく春や三年の生きわかれ 向井去来(丈艸誄)口癖のよし野も春の行衛哉 松木淡々人ばかり死ねとはをかし花の春 竹内玄玄一君が春蚊帳は萠黄に極りぬ 越智越人譲葉の末葉こやせよ千代の春 川上不白春やむかし頭巾下の鼎疵 与謝蕪村春や昔古白といへる男あり 正岡子規春を病み松の根つ子も見飽きたり 西東三鬼友窓口にあり春の女性の友ありき 金子兜太北はまだ雪であらうぞ春のかり 江左尚白死ぬものと誰も思はず花の春 正岡子規小名木川駅春の上潮曇るなり 石田波郷春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎この後の一百年や国の春 高浜虚子二歩ふめば二歩近づきぬ春の富士 富安風生春の鳶寄りわかれては高みつつ 飯田龍太