俳句

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金子兜太 

初夏旅人茜のあとは食欲りて 
銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく  (金子兜太句集)
おおかみに蛍が一つ付いていた 
水脈の果炎天の墓碑を置きて去る 
寒波山並われ腰立たず這い廻る 
雪晴れに一切が沈黙す 
雪晴れのあそこかしこの友黙まる 
友窓口にあり春の女性の友ありき 
犬も猫も雪に沈めりわれらもまた 
さすらいに雪ふる二日入浴す 
さすらいに入浴の日あり誰が決めた 
さすらいに入浴ありと親しみぬ 
河より掛け声さすらいの終るその日 
陽の柔わら歩ききれない遠い家 
狼を龍神と呼ぶ山河かな 
傷みやすい七十男とさより食ぶ 
弯曲し火傷し爆心地のマラソン 
人顔の麻の花なり咲いた咲いた 
わが顔へ葭切蒿雀鳴き立てる 
れんぎように巨鯨の影の月日かな 

金子兜太 俳句を生きた表現者 [ 井口 時男 ]
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