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野澤節子 

さきみちてさくらあをざめゐたるかな 
病む麦を刈りいづこへか運び去る 
せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ 
眠たさの涙一滴夏の風邪 
鹿の声ほつれてやまぬ能装束 
刃を入るる隙なく林檎紅潮す 
冬の日や臥して見あぐる琴の丈 
寒卵わが晩年も母が欲し 
朝日より夕日こまやか冬至梅 
初日記充たすもの何欠くるは何 
羽子の白いまだ暮色にまぎれず突く 
春昼の指とどまれば琴も止む 
遠き闇終の花火と知らで待つ 
西瓜赤き三角童女の胸隠る 
はじめての雪闇に降り闇にやむ 
風邪ごゑを常臥すよりも憐れまる 
柏餅の肌ねつとりと漁港曇る 
服着たる人の素足よ豆の花 
雲雀笛ひた吹く狂院暮れゐるも 

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