稲畑汀子 ●
たんぽぽの野を切りとりて来たる鉢 季たんぽぽの花の仔細に着陸す 季 (ホトトギス)たんぽぽの素通り風の野なりけり 季 (ホトトギス)又踏んでしまふたんぽぽたんぽぽ野 季 (ホトトギス)又の名を紫陽花寺と諾へり 季 (ホトトギス)紫陽花の今朝の色見て旅立ちぬ 季 (ホトトギス)ドア開いてゐれば出て見る春の風 季縦のもの横に机上の春の塵 季菜種梅雨家居の時間過ぎ易く 季旅先の用意のおしやれ春日傘 季豆飯の匂ひみなぎり来て炊くる 季どちらかと云へば麦茶の有難く 季香水をつけぬ誰にも逢はぬ日も 季避暑地とて好きな恰好して歩く 季子の世界母を遠ざけ水遊び 季万緑に抱かれしより光る沼 季三寒に発ちて四温に戻る旅 季山の日の深く入り来し冬座敷 季顔見世を出て川風の暮れてをり 季箸紙に書き終へし名の並びけり 季歯ごたへも亦数の子の味とこそ 季幸せの待ち居る如く初暦 季みどり児の起きてしまひし寝正月 季乗初の運転席に常の如 季今日何もかもなにもかも春らしく 季空といふ自由鶴舞ひやまざるは 季初蝶を追ふまなざしに加はりぬ 季落椿とはとつぜんに華やげる 季苔の花咲きて大方主留守 季母といふ枷なき母の日を旅に 季この闇の香に花蜜柑咲きしこと 季仔馬はね大地の息吹動きけり 季どうしても跣足になつてしまふ児よ 季今日仕事忘れ勤労感謝の日 季ケーキ焼く子が厨占め春休 季サルビアの花には倦むといふ言葉 季さんざしの花に来てゐる鳥の午後 季踏み出せし道一筋に石蕗の花 季子が植ゑて水やり過ぎのクロッカス 季少し長け勿忘草の色減りし 季雨氷とて草の高さに光るもの 季今日何も彼もなにもかも春らしく 季梅雨茸の育つ暗さに踏入りて 季
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