ばすをまち おおじのはるを うたがわず
人間探求に踏み出した波郷の春
「馬酔木」昭和8年5月号初出、句集「鶴の眼」所収の石田波郷の代表的な俳句。この俳句が詠まれた前年に「馬酔木」初巻頭となり、それを機に上京。この俳句は、20歳になってすぐに詠まれたものであり、青春の希望にあふれた俳句と見ることが出来る。
場所は神田の大通り。意味は、「バスを待っていると、大路にも春が来たことがよく分かる」というような感じか。よって、この「春」の中には、初春の寒さがまだ残っている。
人間探求派と呼ばれるようになっていく石田波郷は、前年の馬酔木巻頭を飾った俳句(秋の暮業火となりて秬は燃ゆ)に、すでにその方向性を見出している。行き先は決まり、あとはそれを貫き、ムーブメントを起こすだけだ…といった心境を詠みこんだものか。汽車ではなくバスとしたところに、「敷かれた軌道の上は行かないぞ」という決意を見る。
▶ 石田波郷の句
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