季語|不知火(しらぬい・しらぬひ)

仲秋の季語 不知火

不知火旧暦7月の晦日に、八代海(不知火海)や有明海に現れる怪火で、千灯籠(せんとうろう)・竜灯(りゅうとう)とも呼ばれる。現代では、蜃気楼の一種だと考えられており、その正体は漁火だとされる。
日本書紀の景行天皇十八年五月壬辰の朔に、人の火ではないものに導かれて、八代県の岸に着くことができたという話が出る。このことにより、現在の熊本県を「火の国」と名付けたという。ただし、肥後の國風土記には、日本書紀と同じ説話に触れるも、さかのぼる崇神天皇の時代、空から火が降って山に燃え広がったことをもとに、「火の国」と名付けたという話がある。
「不知火」はいつから使い始められた言葉であるのかは分かっていないが、万葉集には既に、筑紫にかかる枕詞として三首に歌われている。内の二首の長歌には「しらぬひ筑紫の国」と歌われ、本来は肥後の海の怪火を指したものではないのかもしれない。三巻の「沙彌満誓、綿を詠める歌一首」では、

しらぬひ筑紫の綿は身につけて いまだ著ねど暖かに見ゆ

と歌われ、縫物との関連付けが見られる。

【不知火の俳句】

不知火でないかもしれぬ眠たくて  正木ゆう子

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