俳句

季語|頬白(ほおじろ)

晩春の季語 頬白

頬白スズメ目ホオジロ科ホオジロ属ホオジロ。東アジアに広く分布し、日本では北海道から屋久島まで見られ、北海道では夏鳥として、本州以南では留鳥として見られる。平地や丘陵地で観察され、小さな群れで行動する雑食性の鳥である。
4月から7月が繁殖期となり、晩春にオスはよく囀る。地鳴きは「チチッ チチッ」といったものであるが、その囀りは「一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」「源平つつじ白つつじ」などと聞きなす。
「ほおじろ」の名は、頬が白いところからきている。「鵐」とも書き、「しとど」ともいう。日本書紀天武天皇9年の3月10日に摂津国から白巫鳥が貢れているが、「巫鳥」に「芝苔苔(しとと)」の音が当てられており、アオジかホオジロが白化したものではないかと言われている。

【頬白の俳句】

頬白やひとこぼれして散りぢりに  川端茅舎

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季語|蝌蚪(かと)

晩春の季語 蝌蚪

お玉杓子(おたまじゃくし)蛙子(かえるご)・蛙の子(かえるのこ)

蝌蚪の幼生の総称。水田や池などの淡水域に年中見られるものではあるが、稲作との関係で春に目にすることが多い。
親であるカエルは肺呼吸をするが、オタマジャクシは鰓呼吸をする。孵化したばかりのものは胴部と尾部のみで構成されているが、やがて後肢が出て、遅れて前肢が出る。最後に尾が胴部に吸収されて、成体となる。種類によってはオタマジャクシの形で数年を過ごすものもあるが、ニホンアマガエルのオタマジャクシ期間は約1カ月であり、藻類などを食べて生活している。

「蝌蚪」は中国名に由来しており、「お玉杓子」は多賀大社の「お多賀杓子」に形が似ているところからきた呼び名だと考えられている。
童謡に「お玉じゃくしは蛙の子」がある。また、音符をオタマジャクシと呼ぶなど、日本人にとって蛙の子は身近なものである。

【蝌蚪の俳句】

おたまじやくし乾からびし路先細る  西東三鬼
我影のうつれば見ゆる蝌蚪の群  星野吉人

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季語|枸杞(くこ)

仲春の季語 枸杞

枸杞の芽(くこのめ)

枸杞ナス科クコ属の落葉低木。東アジア原産で、全国の日当たりのよい土手などの平地に自生する。
夏から秋にかけて紫色の花をつけ、秋に採れる実は枸杞酒やドライフルーツなどになる。枸杞が春の季語になるのは、若芽を摘んで和え物やお浸しなどにして食すからである。

【枸杞の俳句】

枸杞茂る中よ木歩の残り居る  富田木歩

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季語|凧(たこ・いか・いかのぼり)

三春の季語 

紙鳶(いか・いかのぼり・しえん)・凧揚げ(たこあげ)・凧合戦(たこがっせん)・連凧(れんだこ)・奴凧(やっこだこ)・カイト(かいと)

凧凧揚げは正月の風物詩となっている地方が多いが、端午の節句の行事となっているところもある。長崎のハタ揚げなど、春の行事として定着している地方も多い。なお、正月の凧は武者凧などとして、新春の季語に分類される。
中国で軍事目的に利用されていたものが伝わり、「和名類聚抄」(931年~938年)には「紙鳶」「紙老鳶(しろうし)」として登場するが、春の季語となったのは、「はなひ草」(立圃1636年)あたりからだと考えられている。

江戸時代には大凧合戦が日本各地で行われるようになり、喧嘩や農作物被害なども増え、禁止令が出ることがあった。明暦元年(1655年)の禁止令では、それまで「いか」と呼んでいたものを「たこ」と呼びかえて抵抗したという話も伝わる。

【凧の俳句】

夕ぐれや浮世のそらの凧  秋の坊

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季語|帰雁(きがん)

仲春の季語 帰雁

帰る雁(かえるかり)行雁(ゆくかり)・雁帰る(かりかえる)・去ぬる雁(いぬるかり)・雁の別れ(かりのわかれ)・雁の名残(かりのなごり)

帰雁「雁」と呼ばれるマガン、カリガネ、コクガン、ハクガン、ヒシクイなどは冬鳥として日本で越冬し、2月頃から北方へ帰っていく。七十二侯の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」は4月中旬となり、越冬地ではほとんど見られなくなるが、渡りの中継地となる北海道ではよく観察されるという。
津軽地方には雁風呂という風習がある。羽根を休めるためにくわえてきたとされる枝が、雁が去ったあとの浜辺に残っていると、その雁は命を落としたものと考え、その枝で風呂を焚き、供養をしたという。

「行雁」は春の季語となるが、「雁行」は秋の季語となる。

▶ 関連季語 雁(秋)

【帰雁の俳句】

帰る雁田毎の月の曇る夜に  与謝蕪村
壁ちかくねまりて聞けり帰る雁  石橋秀野

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季語|朝寝(あさね)

三春の季語 朝寝

朝寝目覚める時間になっても体を起こさず、朝遅くまで寝ていることをいう。特に何時までということはないが、夏の季語で仮眠を指す「昼寝」とは性質が異なる。
唐の詩人である孟浩然の五言絶句「春暁」に『春眠不覚暁 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少』があり、起句の『春眠暁を覚えず』からきた春の季語。寝坊という感覚よりも、春の穏やかさを言い表すことが多い。

【朝寝の俳句】

雨ふるとのみおもほへる朝寝かな  久保田万太郎

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季語|プラタナスの花(ぷらたなすのはな)

晩春の季語 プラタナスの花

鈴懸の花(すずかけのはな)・釦の木の花(ぼたんのきのはな)

プラタナスの花プラタナスは、スズカケノキ科スズカケノキ属に属する植物の総称で、日本ではスズカケノキ・モミジバスズカケノキ・アメリカスズカケノキが見られる。落葉樹である上(夏は木陰を作り冬は陽を遮らない)、虫がつきにくく排気ガスにも強いことから街路樹としてよく利用され、ニレ・ボダイジュ・マロニエと共に「世界四大並木樹種」の一つに挙げられる。日本へは明治時代前半に持ち込まれ、街路樹としては、明治39年に東京都港区田村町交差点(新橋)に導入された。
プラタナスの語源は、葉の特徴を表したギリシャ語の platys(広い)であるが、鈴懸の木と呼ばれるのは、本種の果実に似た球形の房が付く山伏の法衣「鈴懸」からきている。
雌雄同株で、新葉が出てくる4月から5月頃に花をつける。雄花は薄黄緑、雌花は朱色である。

【プラタナスの花の俳句】

プラタナスの花咲き河岸に書肆ならぶ  加倉井秋を

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季語|寒の雨(かんのあめ)

晩冬の季語 寒の雨

寒九の雨(かんくのあめ)

寒の雨寒の内(寒の入から立春の前日まで:1月5日頃から2月3日頃まで)に降る冷たい雨。寒々とした冬の雨を指す「寒雨(かんう)」とは異なる。
「寒九の雨」とは、寒の入りから9日目(1月13日頃)に降る雨をいい、「寒九の雨は豊作のしるし」と言われた。寒九には、一番水が澄むとの言い伝えがある。

【寒の雨の俳句】

雁さわぐ鳥羽の田づらや寒の雨  松尾芭蕉

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季語|狸(たぬき)

三冬の季語 

狸哺乳綱食肉目イヌ科タヌキ属タヌキ。極東にのみ生息していたが、毛皮目的で旧ソビエト連邦に持ち込まれ、それがヨーロッパなどに広がり、生態系を乱すとして問題になっている。
夜行性で、雑食。主に湿地や森林で生活するが、都市部で見られることもある。複数の個体が糞をする場所を「ため糞(ためふん)」と呼ぶ。個体同士の情報交換を行っていると考えられている。
積雪の多い地方を除き、狸に冬眠の習性はなく、冬場の個体は脂肪を蓄え、毛も長くなるため、丸々としている。冬場の狩猟対象となるために、冬の季語となっている。

狸は驚くと擬死状態になるため、「たぬき寝入り」という慣用句が生まれた。また、悪賢い者同士のたとえに「狐と狸」、当てにならないことを計算に組み込む「とらぬ狸の皮算用」などの言葉も生まれている。
ちなみに「たぬき」の語源は、「たぬき寝入り」を「魂抜き(たまぬき)」と見たことによるものとの説がある。

【狸の俳句】

戸を叩く狸と秋を惜しみけり  与謝蕪村

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季語|熊(くま)

三冬の季語 

北極熊(ほっきょくぐま)・白熊(しろくま)・羆(ひぐま)・赤熊(あかぐま)・月輪熊(つきのわぐま)・黒熊(くろくま)

熊哺乳綱食肉目クマ科に属する動物の総称がクマであるが、これにはジャイアントパンダも含め、8種が属する。その内、日本に生息するのはツキノワグマとヒグマ(エゾヒグマ)であり、ツキノワグマは本州と四国に、ヒグマは北海道に生息する。最大のものは白熊と呼ばれるホッキョクグマで、日本では動物園で観察される。
初冬の季語に「熊穴に入る」があるように、ツキノワグマもヒグマも、秋にドングリなどをたくさん食べて、12月から3月頃にかけて巣穴に籠る。この間に出産も行われる。よって、通常は秋の活動が活発で、冬の間には熊の姿は見られないものであるが、暖冬の影響や餌の減少の影響で、冬眠しない熊も増えている。それらが狂暴化して人に被害を与えるニュースが増えており、それらの熊を近年では「穴持たず」と呼ぶ。

【熊の俳句】

穴に入る熊になりたく思ひをり  高木晴子

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