俳句

季語|凧(たこ・いか・いかのぼり)

三春の季語 

紙鳶(いか・いかのぼり・しえん)・凧揚げ(たこあげ)・凧合戦(たこがっせん)・連凧(れんだこ)・奴凧(やっこだこ)・カイト(かいと)

凧凧揚げは正月の風物詩となっている地方が多いが、端午の節句の行事となっているところもある。長崎のハタ揚げなど、春の行事として定着している地方も多い。なお、正月の凧は武者凧などとして、新春の季語に分類される。
中国で軍事目的に利用されていたものが伝わり、「和名類聚抄」(931年~938年)には「紙鳶」「紙老鳶(しろうし)」として登場するが、春の季語となったのは、「はなひ草」(立圃1636年)あたりからだと考えられている。

江戸時代には大凧合戦が日本各地で行われるようになり、喧嘩や農作物被害なども増え、禁止令が出ることがあった。明暦元年(1655年)の禁止令では、それまで「いか」と呼んでいたものを「たこ」と呼びかえて抵抗したという話も伝わる。

【凧の俳句】

夕ぐれや浮世のそらの凧  秋の坊

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季語|朝寝(あさね)

三春の季語 朝寝

朝寝目覚める時間になっても体を起こさず、朝遅くまで寝ていることをいう。特に何時までということはないが、夏の季語で仮眠を指す「昼寝」とは性質が異なる。
唐の詩人である孟浩然の五言絶句「春暁」に『春眠不覚暁 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少』があり、起句の『春眠暁を覚えず』からきた春の季語。寝坊という感覚よりも、春の穏やかさを言い表すことが多い。

【朝寝の俳句】

雨ふるとのみおもほへる朝寝かな  久保田万太郎

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季語|斑雪(はだれゆき・はだれ・まだらゆき)

三春の季語 斑雪

斑雪降ったあとに斑になって残っている雪のこと。また、春になって降る牡丹雪も斑雪と言うことがある。俳諧歳時記栞草(1851年)では「はだれ雪」が冬之部兼三冬物にあり、「万葉には、雪のみならず霜にもはだれとよむ」とある。
「はだれ」は「葉垂れ」であり、春の葉が垂れるくらいに降った雪の意味であるとの説もある。万葉集には詠み人知らずで次の和歌が載る。

笹の葉にはだれ降り覆ひ消なばかも 忘れむと云えばまして思ほゆ

【斑雪の俳句】

ふらここの鎖まつすぐ斑雪  角川照子

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季語|春の雪(はるのゆき)

三春の季語 春の雪

春雪(しゅんせつ)牡丹雪(ぼたんゆき)

春の雪立春以降に降る雪。「牡丹雪」は、雪の結晶が多数付着し合い、花びらのように大きな雪片をもつ雪のことを言う。これは、春に限って降るものではないが、気温が上昇する中で降る雪は、雪片が大きくなりがちである。地面に落ちるとすぐに融けることが多い。

▶ 関連季語 淡雪(春)

【春の雪の俳句】

春の雪霏々として又降つて来る  正岡子規

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季語|目刺(めざし)

三春の季語 目刺

目刺イワシを塩漬けした後、目に竹串や藁を通して乾燥させたもの。鰓に刺したものは「頬刺」と呼ぶ。焼いて食べる。鰯の種類としては、カタクチイワシやウルメイワシなどを用いる。
の旬は秋から冬にかけてであるが、目刺は冬場の乾燥した気候を利用して干してつくられるので、食べごろは春となる。
実業家であった土光敏夫氏が、質素な暮らしぶりで「メザシの土光さん」としても親しまれたように、「貧しい食卓」の象徴としても取り上げられる。

【目刺の俳句】

ぼうぼうと燃ゆる目刺を消しとめし  中村汀女

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季語|青饅(あおぬた)

三春の季語 青饅

青饅芥子菜を酢味噌であえたもの。魚介類を加えることもある。俳諧歳時記栞草(1851年)では春之部「兼三春物」に分類し、「和漢三才図会」の引用で「芥(からし)の葉青きを醋(す)に合せ、魚膾に和してこれを食ふ。俗に阿乎乃太(あをのた)といふ」とある。
「饅」とは饅膾(ぬたなます)の略称で、酢味噌で和えた料理のこと。見た目を沼田に見立てて「ぬた」と呼んだもので、室町時代にはすでに存在していた。
青饅の「青」は、芥子菜の青さを表現したもので、青饅が春の季語になるのも、芥子菜の旬が2月から4月になるためである。

【青饅の俳句】

青饅や家路の果に家はあり  友岡子郷

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季語|松むしり(まつむしり)

三春の季語 松むしり

松毟鳥(まつむしり・まつむしりどり)

松むしり「松むしり」は、スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキ(菊戴)のこと。系統的にはウグイスに近く、かつてはウグイス科に分類されていた。日本で最も小さな鳥とも言われている。
中部以北で繁殖し、留鳥であるが西日本では冬鳥として飛来する。山地の針葉樹林に生息し、秋には暖かいところに移動し、平野部の公園でも見ることができる。
松の若葉をむしる習性があるところから「松むしり」の名があるが、菊戴の方が一般的な呼び名である。ただし、「松むしり」は春の季語になるのに対し、「菊戴」は秋の季語になる。
新芽のあたりに生息する昆虫を捕食している様子が、松をむしっているように見えて「松むしり」の名がついた。

【松むしりの俳句】

飛んでまたみどりに入るや松むしり  広瀬惟然

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季語|浅蜊(あさり)

三春の季語 浅蜊

浅蜊汁(あさりじる)

浅蜊「浅蜊」はマルスダレガイ科アサリ属の二枚貝の総称で、アサリやヒメアサリを指す。塩分が薄い砂浜の浅いところに生息する。
貝殻には様々な色があり、同じ模様を持ったものはないとも言われる。
浅蜊を中心とした貝を遠浅の砂浜で採る「潮干狩」は春の季語になっており、特に旧暦三月三日の大潮は一年で最も干満差が激しくなり、はるか沖まで行って貝を採ることができる。浅蜊はこの時期、産卵を控えて旨みが増す。

浅蜊は、古代から重要な食材であったと考えられており、貝塚などから夥しい数の貝殻が出土している。浅蜊汁や浅蜊飯など、現代でも様々な形で調理される。しかし、海底ではほとんど移動しないため、有毒プランクトンを食べ続けて貝毒に汚染される危険性が高い貝でもある。

「あさり」は、砂に棲む貝を指す「砂利(さり)」と「浅い」が結びついたものだとの説がある。つまり、浅蜊とは、浅いところに棲む貝という意味である。「漁る」は、浅蜊採りが語源になっているとの説があるが、逆に「漁る」が浅蜊の語源であるとの説もある。

【浅蜊の俳句】

あさり貝むかしの剣うらさびぬ  宝井其角

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季語|鷽(うそ・うそどり)

三春の季語 

鷽姫(うそひめ)

鷽スズメ目アトリ科ウソ属ウソ。ヨーロッパからアジア北部にかけて分布し、日本では漂鳥あるいは冬鳥として観察できる。
春に桜や桃の蕾などを食べ、繁殖期となる夏には昆虫を食べる。雄の頬や喉には赤い羽毛があるが雌にはなく、雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ぶ。
その声は口笛に似ており、鷽の名は、口笛を意味する古語「うそ」から来ている。「琴弾鳥(ことひきどり)」とも呼ぶが、これは、鳴く時に脚を上げて琴を弾くような動作をするところから来ている。

新春の季語に「鷽替」があるが、これは、1月7日の夜に太宰府天満宮で行われる特殊神事を指す。御祭神の菅原道真が蜂に襲われた時、鷽が助けに来てくれたという故事に基づくものである。

【鷽の俳句】

照り雨や滝をめぐれば鷽の啼く  加舎白雄

【鷽の鳴き声】
繁殖期は山地の針葉樹林に生息するが、冬には10羽ほどで低地の林間にやってくることもある。映像では「琴弾鳥」の由来となった動作は分からない。(YouTube 動画)

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季語|蛤(はまぐり・うむき・はま)

三春の季語 

蛤「ハマグリ」は、マルスダレガイ上科マルスダレガイ科ハマグリ属の二枚貝で、近縁種にチョウセンハマグリやシナハマグリもあり、見た目で区別することは難しい。中国産のシナハマグリに対し、チョウセンハマグリは「汀線蛤」と書き、在来種である。チョウセンハマグリはハマグリよりも深いところに生息し、殻に厚みがある。
日本における生息地は、北海道から九州沿岸の砂泥の中で、縄文時代から重要な食材になっていた。食材としては2月から4月の春が旬で、桑名の焼蛤は名物になっている。
二枚の貝殻がぴったりと重なり合うことから、夫婦和合の縁起物であり、結婚式には蛤のお吸物が出る。また、三月三日の雛祭に食べると、良縁を招くとされる。
「貝合わせ」という重なり合う貝殻を探し出す遊びがあるが、この貝合わせには蛤が使用された。

古くは二枚貝の総称として「はまぐり」が使用されていたと言われ、「浜の栗」が語源になっているとされる。
古事記には「大国主の神」の項に蛤貝比売(うむがいひめ)が登場し、赤貝を神格化したキサ比売(きさがいひめ)とともに、大火傷を負った大国主を蘇らせている。ここでは、赤貝の汁を絞って薬としたものを、蛤の貝殻に入れるかのような描き方がされている。

不良少年らを指して「ぐれる」と言うことがあるが、これは「はまぐり」がもとになった「ぐりはま」から来ている。「ぐりはま」とは、殻がぴったりと合わないことを指したもので、食い違いを意味する。そこから「ぐれはま」に転訛し、いつしか不良少年らを指して「ぐれる」と言うようになった。

【蛤の俳句】

蛤のぶつかり合つて沈みけり  石田勝彦

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