いなびかり きたよりすれば きたをみる
橋本多佳子の代表句
奈良俳句会の奈良日吉館での句会で生まれた橋本多佳子の俳句で、「紅絲」(1951年)所収。「北を見る」という連作の中のひとつで、「いなびかり遅れて沼の光りけり」「いなびかり北よりすれば北を見る」「地の窪すぐにあふるゝいなびかり」「わが行方いなづましては闢きけり」「いなづまの触れざりしかば覚めまじを」「双の掌をこぼれて了ふいなびかり」「いなづまのあとにて衿をかきあはす」「いなびかりひとの言葉の切れ切れて」「いなづまの息つく間なし妬心もつ」「燈の消えて野にあるごときいなびかり」。
季語は「稲光」で秋。光れば光る方向に目をやるという、肝の据わった様子が読み取れる。また、上方に置く「北」という方向を使ったところにも意味がある。自らの定めに向き合う中で生まれた俳句か。
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