10月の俳句旅|芭蕉を見送った住吉の神
元禄7年9月13日(1694年10月31日)、松尾芭蕉は住吉大社の宝之市神事に参列し、名物の升(一合升)を購入した。この日、長谷川畦止亭での月見に参加する予定であったが、
升買て分別かはる月見かな
と詠んでひとに託し、病床に就いた。ひと月後、大坂御堂筋の花屋仁左衛門の貸座敷で亡くなった。そこで詠まれた「旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる」を、芭蕉の辞世とする。
【住吉大社】
全国約2300社の住吉神社の総本社で、住吉大神(底筒男命・中筒男命・表筒男命)と神功皇后を祀る海上交通の守護神である。神功皇后の新羅渡海時に顕れ、三韓征伐の後、山口県下関市の住吉神社に荒魂を、和魂を住吉大社に祀ったとされる。
本殿は住吉造と呼ばれる特徴的なもので、江戸時代後期に造営された現在の本殿は国宝に指定されている。その他、川端康成の「反橋」の舞台にもなった太鼓橋など、見どころが多い。7月31日を中心にして行われる住吉祭は、大阪三大夏祭に数え上げられる。
「住吉の松」が歌枕となったことから、和歌の神としても信仰されている。
【宝之市神事】
現在では10月17日に執り行われる神事で、神功皇后が三韓の貢物で市を立てた故事に因むとされる。「宝之市」とは、神の恵みによる収穫物を神に供え、残りを分け合うという意味合いがある。かつては、商いで重宝された升が多く売られたことから、「升の市」とも称されている。