俳句

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岡本眸 

春の夜のハンカチ人のため使ふ 
日曜といふさみしさの紙風船 
臥すは嘆き仰ぐは怨み流し雛 
氷店一卓のみな喪服なる 
石塀へ水鉄砲のためし撃ち 
洗ひ髪母に女の匂ひして 
蛍籠蛍の死後も闇に置く 
地の罅によべの雨滲む秋彼岸 
手の温み移れば捨てて烏瓜 
文房具屋に昼を遊べり寒の入 
愛ほろぶごとセーターのほどかるる 
渚なき海をさびしと目貼しぬ 
温もるは汚るるに似て風邪ごもり 
柚子湯出て夫の遺影の前通る 
生きものに眠るあはれや龍の玉 
橋かけてさびしさ通ふ枯木山 
残りしか残されゐしか春の鴨 
秋風や柱拭くとき柱見て 
雲の峰一人の家を一人発ち 
溺愛のわが手にかけし胡桃割 
夫の嘘うなづき乍らレース編む 
石塀に大きな葉影赤痢出づ 
ポピー咲く帽子が好きで旅好きで 
雨を見て眉重くゐる紫蘭かな 
きりん草枯れゆけり括られもせず 
夕凪の海を硬しと見てゐたり 
海猫鳴くや鉄路の終は潮くさき 

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