上村占魚　●

生きさざえ噛めばしほさゐ胸に鳴る　季
本丸に立てば二の丸花の中　季
雪やなぎ雪のかろさに咲き充てり　季
秋寒の濤が追ひ打つ龍飛崎　季
雲とざす響灘より冬の雷　季
しもふりの肉ひとつつみ寒見舞　季
白鳥の音なく降りし水輪かな　季
いのちかけて待ちゐし鰤や鰤来る　季
花すぎて花の冷えある昨日けふ　季
章魚沈むそのとき海の色をして　季
大いなる里の団子や秋まつり　季
巌の上に突き得し雲丹を十ばかり　季
ひらかれて穴子は長き影失ふ　季
舟小屋のうしろ日蔭の花南瓜　季
旗雲の輝きに鶸群れ飛べり　季
万緑のしたたる谿に温泉あり　季