花 click ⇒ ≪解説≫
しばらくは花の上なる月夜かな 松尾芭蕉(初蝉)●家深くゐて花時の素顔かな 長谷川双魚本丸に立てば二の丸花の中 上村占魚花の闇ひらくに銀の鍵使ふ 鳥居真里子焼にけりされども花はちりすまし 立花北枝人の世へ儚なき花の夢を見に 大谷句仏花あれば西行の日とおもふべし 角川源義うすらひは深山へかへる花の如 藤田湘子ながむとて花にもいたし頸の骨 西山宗因●花は芳野伽藍一を木の間哉 松江重頼花も待たで歸いそぐや雨の京 久保より江こもりゐや花なき里に住み馴れて 久保より江花の影寝まじ未来が恐しき 小林一茶いざゝらば死ゲイコせん花の陰 小林一茶腸も断つぞよ花の衣がへ 池田正式そばに居て見ぬや芳野のはなの先 池田正式夜の明けて花にひらくや浄土門 山本西武入相の鐘聞きつけぬ花もがな 田代松意土に埋て子の咲花もある事か 上島鬼貫花咲いて死ともないが病ひかな 小西来山花にうづもれて夢より直に死なんかな 越智越人死にさうな人ひとりなし花の山 祇徳賽銭も用意顔なり花の森 向井去来青みたる松より花の咲きこぼれ 向井去来これはこれはとばかり花の吉野山 安原貞室咲く花にかき出す縁のかたぶきて 松尾芭蕉咲く花に小さき門を出つ入りつ 松尾芭蕉動かねば闇にへだつや花と水 沖田総司寝姿の司や花をまくらもと 大原其戎闇き夜も花の明りや西の旅 井上井月花の頃西行もせぬ朝寝かな 藤野古白ふるさとに花の山あり温泉あり 高浜虚子これはこれはとばかり花のよしの山 安原貞室花にあかぬ憂世男の憎き哉 向井千子(続虚栗)世に生れ日本に生れ月と花 山本安三郎またも見る闇かは花のあかりある 秋の坊又ひとつ花につれゆく命かな 上島鬼貫咲からに見るからに花のちるからに 上島鬼貫花の下「かあいいピスの墓」とあり 竹久夢二衆生花に酔へば済度に我醒めん 大谷句仏詩にすける人の心や花作り 井阪春清極楽や人のねがひの花の影 望月宋屋花満ちてゆく鈴の音の湧くやうに 黒田杏子