大谷句仏 ●
初旅の晴れ晴れしさよ焼津富士 季人の世へ儚なき花の夢を見に 季投扇興末子さかしく笑ひ初む 季春近き銀座の空を鷗飛ぶ 季岩に立つて淀む木流す日永かな 季落ち合うて川の名かはる紅葉かな 季今宵死ぬ人もやあらん花衣 季衆生花に酔へば済度に我醒めん 季散るときが浮むときなり蓮の花 季末法の世に正法の帰り花 季勿体なや祖師は紙衣の九十年 季船人の應と答へし朧かな 季盃の酒打ち捨つる落花かな 季人の世は無常が常よ落椿 季夏断せん我も浪化の世ぞ恋し 季東山と枕並ぶる午睡かな 季昼を廻る燈籠の絵や日影さす 季再建も久しき寺の門茶かな 季大年のわが顔惜しむ鏡かな 季荒海やしまきの晴れ間日落つる 季風鈴の遠音淋し彼岸西風 季
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