木下夕爾 ●
春雨やみなまたたける水たまり 季愛憐の火ははるかなり青き踏む 季あくびしていでし泪や啄木忌 季噴水の影ある白き椅子ひとつ 季毛虫焼く火のめらめらと美しき 季枝豆や詩酒生涯は我になし 季牧柵を越えてあまたの秋の蝶 季音のして海は見えずよ草の花 季枯野ゆくわがこころには蒼き沼 季一片の雲ときそへる独楽の澄み 季家々や菜の花いろの灯をともし 季パイプ椅子鉄の灰皿棕櫚の花 季陽に倦みて雛罌粟いよよくれなゐに 季羽蟻翔ちぬさらにまぶしき園ありや 季歎けとてやゆすらうめ咲く厨裏 季おだやかに戻る暑さや稲の花 季
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