長谷川かな女 ●
チューリップ影もつくらず開きけり 季冬さうびかたくなに濃き黄色かな 季羽子板の重きが嬉し突かで立つ 季吉原の水打つて夜となる立夏 季揚花火二階灯してすぐ消して 季立冬の明治の声を録音され 季鴨撃ちの通りしあとの初氷 季生涯の影ある秋の天地かな 季 (胡笛)●眸伏せて雌鹿が赤き実をつつく 季傘つくる宿に咲いたり白牡丹 季汗の玉抱へし花の束に落つ 季花烏賊の甲羅を舟のごと浮かし 季秋鯵に遊行寺通り早日暮れ 季蜂飛べりラジオ雑音となりし昼 季曼殊珠華あつまり丘をうかせけり 季死を急がず曼珠沙華見れども見れども 季面白くて傘をさすならげんげん野 季雪ばんば飛ぶ阿部川の洲の幾つ 季三伏の琴きんきんと鳴らしけり 季うつ伏して山角這ひぬ夏の霧 季ダムに沈む優曇華の咲く電球さげ 季萱草の花にかくれて浅間噴く 季湯がへりを東菊買うて行く妓かな 季霜除をする一束の藁に蜂 季スイートピー蔓のばしたる置時計 季鶯笛うるさくなつてポケットへ 季
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