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上田五千石 

水草生ふ放浪の画架組むところ 
子の岩の没りて出てこぬ卯浪かな 
漢籍を曝して父の在るごとし 
あけぼのや泰山木は蝋の花 
遠嶺みな雲にかしづく厄日かな 
みみず鳴く日記はいつか懺悔録 
もがり笛風の又三郎やあーい 
涸るる身を捩りて滝の丈保つ 
火の鳥の羽毛降りくる大焚火 
しぐれ忌を山にあそべば鷹の翳 
天龍に下す三日の諏訪の水 
有明山初松風をおろしけり 
磁石の蓋閉ぢて山旅始かな 
恵方嶺噴煙もまた雪白に 
山風に焔あらがふ磯どんど 
貝の名に鳥やさくらや光悦忌 
色鳥や淋しからねど昼の酒 
初めての蛍水より火を生じ 
あたたかき雪がふるふる兎の目 
さくらえびびよりとおもふ沖の明日 
青胡桃しなのの空のかたさかな 
栃咲くやまなこ涜れてゆくばかり 
壺にして水引直き花ならず 
銭亀のいづれ分たず転倒す 

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