上田五千石 ●
水草生ふ放浪の画架組むところ 季子の岩の没りて出てこぬ卯浪かな 季漢籍を曝して父の在るごとし 季あけぼのや泰山木は蝋の花 季遠嶺みな雲にかしづく厄日かな 季みみず鳴く日記はいつか懺悔録 季もがり笛風の又三郎やあーい 季涸るる身を捩りて滝の丈保つ 季火の鳥の羽毛降りくる大焚火 季しぐれ忌を山にあそべば鷹の翳 季天龍に下す三日の諏訪の水 季有明山初松風をおろしけり 季磁石の蓋閉ぢて山旅始かな 季恵方嶺噴煙もまた雪白に 季山風に焔あらがふ磯どんど 季貝の名に鳥やさくらや光悦忌 季色鳥や淋しからねど昼の酒 季初めての蛍水より火を生じ 季あたたかき雪がふるふる兎の目 季さくらえびびよりとおもふ沖の明日 季青胡桃しなのの空のかたさかな 季栃咲くやまなこ涜れてゆくばかり 季壺にして水引直き花ならず 季銭亀のいづれ分たず転倒す 季
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