青木月斗　●

白靴の汚れが見ゆる疲かな　季
春愁や草を歩けば草青く　季
初夢やうらうらとして金砂子　季
柘榴自ら侘しきものと思へるや　季
金魚玉に聚まる山の翠微かな　季
臨終の庭に鶯鳴きにけり　季
余り多く酒たしなまず鱧茶漬　季
太閤が睨みし海の霞哉　季
盞の数をつくして年酒かな　季
泉殿急雨に魚の飛ぶ見ゆる　季
井戸水を浴びて涼しき日陰哉　季
杉風忌杉風肥えて暑からん　季
宗祇忌や秋澄み渡る富士の山　季
一冬の炉に主たり裘　季
その色とその香の春や椿餅　季
壷焼や暖さ云ひ脱ぐ旅合羽　季
其角忌や槎牙たる梅の影も闇　季
このあたり焼かれし草の若葉かな　季
萩若葉霖雨の中の晴一日　季
泥川の月夜に泛きぬ大鯰　季