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三橋鷹女 

百八の鐘鳴り止みぬそとは雪 
鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし  (白骨)
ひるがほに電流かよひゐはせぬか 
年守るやこころ剣の如く痩せ 
初湯出て青年母の鏡台に 
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 
老いながら椿となつて踊りけり 
水急ぐ白一色の菖蒲田へ 
ビール酌む男ごころを灯に曝す 
半生のわがこと了へぬ遠花火 
白露や死んでゆく日も帯締めて 
母在りき冬至もつとも輝きて 
蛇穴を出て水音をききにけり 
ひとひらの雲ゆき散れり八重桜 
千年の樗の花に棲み古りぬ 
忍冬のこの色ほしや唇に 
しゃが咲いてひとづまは憶ふ古き映画 
蔦青したれもたれもが勤めに出る 
巣燕に金星見えぬとも限らぬ 
黄梅に佇ちては恃む明日の日を