三橋鷹女 ●
百八の鐘鳴り止みぬそとは雪 季鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 季 (白骨)●ひるがほに電流かよひゐはせぬか 季年守るやこころ剣の如く痩せ 季初湯出て青年母の鏡台に 季この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 季老いながら椿となつて踊りけり 季水急ぐ白一色の菖蒲田へ 季ビール酌む男ごころを灯に曝す 季半生のわがこと了へぬ遠花火 季白露や死んでゆく日も帯締めて 季母在りき冬至もつとも輝きて 季蛇穴を出て水音をききにけり 季ひとひらの雲ゆき散れり八重桜 季千年の樗の花に棲み古りぬ 季忍冬のこの色ほしや唇に 季しゃが咲いてひとづまは憶ふ古き映画 季蔦青したれもたれもが勤めに出る 季巣燕に金星見えぬとも限らぬ 季黄梅に佇ちては恃む明日の日を 季
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