俳句

物いへば唇寒し秋の風

ものいへば くちびるさむし あきのかぜ

物いへば唇寒し秋の風創作年代は未詳とされるが、「蕉翁句集」に元禄4年とある、松尾芭蕉の句。元禄9年3月に刊行された史邦の「芭蕉庵小文庫」の最後に、「座右之銘 人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ 芭蕉翁 物いへば唇寒し穐の風」と載る。これが芭蕉の座右の銘とされるが、果たしてそうだろうか?むしろ史邦の座右の銘に、芭蕉の句を加えたと見る方が自然ではなかろうか。
もっとも、「芭蕉図録」の真蹟懐紙とされるものに「『ものいはでたゞ花をみる友もがな』といふは、何がし鶴亀が句なり。わが草庵の座右にかきつけゝることをおもひいでゝ、ものいへば唇寒し秋の風 武陵芭蕉翁」というのもあるが。

荘子の「唇竭れば即ち歯寒し」に拠るとされ、現在では、「口は災いの元」にも似た、慣用句として用いられている。

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千住神社境内の句碑(東京都足立区)

物いへば唇寒し秋の風かつては将軍が鷹狩に興じていたという場所に、千住神社がある。その境内に句碑があり、「慶応丁卯仲秋月 ひとの短を云事なかれ 己の長を説くことなかれ ものいへば唇 さむし 秌乃風」と刻まれる。副碑には、「慶応二年建之」とある。1866年の建立である。この句碑が何故建立されたかは不明。
【撮影日:2019年5月6日】

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