俳句

春愁や櫛もせんなきおくれ髪

しゅんしゅうや くしもせんなき おくれがみ

「より江句文集」(1928年)所収の久保より江の句。

▶ 久保より江の句

句評「春愁や櫛もせんなきおくれ髪」

杉田久女「花衣 創刊号 女流俳句を味読す」1932年

より江夫人らしい句である。
春愁の句は、櫛でかきあげてもかきあげてもほつれおちる髪を借りて、春愁の女主人公を描き出した女らしい情緒の句である。万葉の「たけばぬれたかねば長き妹が髪」というような可憐な感じである。より江夫人の句は一体に、柔かい繊細な感情をきぬ糸のように縷々と織りこんだ句が特色である。此春愁の句など夫人の若い日の面影をほうふつとさせるものがある。

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