俳句

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久保より江 

泣き虫の子猫を親にもどしけり 
ねこに来る賀状や猫のくすしより 
ねこの眼に海の色ある小春かな 
猫の子のもらはれて行く袂かな 
旅に得し消息のはし猫初産 
帰り来ぬ猫に春夜の灯を消さず 
たんぽゝを折ればうつろのひゞきかな 
袂より比叡の薊や旅ころも 
籐椅子に猫が待つなる吾家かな 
そのかみの絵巻はいづこ濃あぢさゐ 
きのふけふ霞みそめけり春日山 
春愁やこの身このまヽ旅ごころ 
猫の子もひいなの前に籠ながら 
猫の子の名なしがさきにもらはれし 
宴果ててまかるひとりに薔薇の雨 
窓あけて猫呼ぶ聲の朧かな 
カルタ切れどよき占出でず春の宵 
新しき足袋も足駄も春の泥 
ちりあくた流るるままに春の潮 
春愁や櫛もせんなきおくれ髪  (より江句文集)
戀ひ負けて去りぎはの一目尾たれ猫 
戀猫に淡き灯かげや月の窓 
不器量の小ねこいとしや掌 
花も待たで歸いそぐや雨の京 
ままごとのむしろそのまま花の雨 
こもりゐや花なき里に住み馴れて 
この野道薊の外に花もなし 
短夜や膝に重たき親子猫 
紅の汗しとどなる踊りかな 
籐椅子やあるじの留守の猫ぶとん 
衣更へたもとに秘めし小句帳 
ちいさなる女ばかりや衣更へ 
湯上りの素顔よろしき浴衣かな 
秋風にやりし子猫のたより聞く 
さすらひの小唄もよしや秋の風 
露の徑をゆづりおくれてあと戻り 
別れ路やただ曼珠沙華咲くばかり 
はつ雪やしまひ忘れし鉢のばら 
戀猫の歸り来ぬ風邪の枕もと 
烏猫こたつの上にあくびかな 
枯菊になほ愛憎や紅と黄と 
この月よをちかた人にまどかなれ 
うたたねの夢美しやおきごたつ 
秋汐にやぶれガルタの女王かな 
障子張るや新しき刷毛に糊します 
宿の子をかりのひいきや草相撲 
夕凪や素足にぬるき汐よせし