たたかれて昼の蚊をはく木魚かな

たたかれて ひるのかをはく もくぎょかな

類似性を超越した木魚の形|夏目漱石の名句

たたかれて昼の蚊をはく木魚かな「漱石俳句集」(1917年)所収の夏目漱石の俳句。夏目漱石の代表句のようにとらえられているが、狂歌で知られる大田南畝の「一話一言」に六花堂東柳の「たたかれて蚊を吐く昼の木魚哉」があり、よく似ていると指摘される俳句でもある。

昼のおつとめに、木魚の中から蚊がよろよろと出てきたというような意味になる。
「たたかれて昼の蚊をはく木魚かな」の構成を見ると、漱石は、「たたかれて蚊を吐く昼の木魚哉」を知っていて、添削したものだろう。「昼の木魚」であれば、覚醒のイメージが重なり、木魚が野暮ったくなる。「昼の蚊」としたところに、眠気覚ましの「木魚」と、夜行性の「蚊」の対比が生まれて面白みが増す。文学者として、「たたかれて蚊を吐く昼の木魚哉」に黙っていられなかったのだろう。

木魚を擬人化した時に、二つの句の間には大きな差が生じる。「たたかれて蚊を吐く昼の木魚哉」であれば、愚鈍さを攻撃されて刺を生じるような感じになるが、「たたかれて昼の蚊をはく木魚かな」であれば、怠け心を「昼の蚊」として、自らに鞭打つ俳句ととらえることができる。

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