やくそくの かんのつくしを にてください
1941年発刊「白痴」所収の川端茅舎の俳句。「二水夫人土筆摘図」八句のうちの一句。その八句とは、
日天子寒のつくしのかなしさに
寒のつくしたづねて九十九谷かな
寒の野のつくしをかほどつまれたり
寒の野につくしつみますえんすがた
蜂の子の如くに寒のつくづくし
約束の寒の土筆を煮てください
寒のつくし法悦は舌頭に乗り
寒のつくしたうべて風雅菩薩かな
二水夫人とは、あをきり句会会長・藤原二水の、夫人。死の半年前となる昭和16年(1941年)2月の俳句。土筆は春の季語であるが、ここでは「寒」で、冬の俳句となる。
昭和9年(1934年)に、異母兄の川端龍子の夏子夫人の紹介で二水夫人と知り合ったことから、茅舎は、あをきり句会の選者となる。晩年は川端龍子の庇護下にあり、病のためにほぼ寝たきりであったという。この八句は、兄の龍子の日本画の如く、情景を時系列で並べ、詞で展開したものである。
「土筆」は、曾良の辞世の如く「尽し」に掛けたものかもしれない。「寒」に対峙する「煮」が入ったこの句のみ、「土筆」と漢字で表現しているところが注目される。
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