俳句

梅一輪一輪ほどのあたたかさ

うめいちりん いちりんほどの あたたかさ

梅の名句であり服部嵐雪の代表句

梅一輪一輪ほどのあたたかさ「玄峰集」や「遠のく」にに掲載される服部嵐雪の代表句。玄峰集の「春之部」に「梅」の前書きで掲載されるが、寒梅とも言われ、冬に分類されることがある。
現代俳句で忌み嫌われる「季重なり」の代表句でもあるが、下記のように、高浜虚子は、その著書「俳句とはどんなものか」の中でこの句を取り上げ、季重なりを肯定している。


梅は、「花の兄」とも言われ、年一番に咲く花の地位を得ている。あたたかさとは、厳冬にようやく一輪の花をつけたことの喜びである。

▶ 服部嵐雪の俳句

句評「梅一輪一輪ほどのあたたかさ」

高浜虚子「俳句とはどんなものか」1927年

句意は梅の花が一昨日はただ一輪見えたのが昨日は二輪今日は三輪になってその梅の花のぼつぼつと数を増してくるに従って、どことなく春らしい暖かさも増してくるというのであります。もし春意というようなものが天地の間に動いたとするならば、一輪一輪と開いてゆく梅はそれをシンボライズしたようなものであります。それと同じ意味でその一輪一輪の梅は春暖のシンボルとして人の目に映ずるのであります。
この句は「梅」が季題であります。「暖か」というのもやはり季題でその方は「時候」の方に属するのであります。この句のごときは季重なりというものでありますが、季重なりはいけないと一概に排斥する月並宗匠輩の言葉はとるに足りませぬ。季重なりはむしろ大概な場合さしつかえないのであります。

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おのころ島神社の句碑(兵庫県南あわじ市)

梅一輪一輪ほどのあたたかさ服部嵐雪は、淡路国三原郡小榎並村(兵庫県南あわじ市榎列小榎列)で生まれたと言われている。この辺りは、日本神話の国生みの舞台ともされる場所で、近くには最初に出来上がった島に建てられたとされる「おのころ島神社」がある。この神社は、正面に21.7mの巨大な朱色の鳥居を持ち、古墳のように盛り上がった丘の上に、伊弉諾命・伊弉冉命の夫婦神を祀っている。
その神社の本殿前の石段横に、嵐雪の最も有名な句とも言える「梅一輪一輪ほどのあたたかさ」の句碑がある。句碑横の立看板には下記のようにある。

梅一里む一里む保ど農 阿多多可さ 嵐雪
・梅一輪いちりんほどのあたたかさ

服部嵐雪は蕉門十哲の一人で、承応三年(一六五四)榎列に生れ、宝永四年(一七〇七)五十四才で没した。この碑は昭和三十一年(一九五六)嵐雪二百五十年祭記念建立である。
 出生地については江戸湯島説もある。
昭和五十八年三月 三原町教育委員会 三原町文化財審議委員会

【撮影日:2013年5月22日】

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