三春の季語 はこべ
はこべら・繁縷(はこべら)・ひよこぐさ
ナデシコ科ハコベ属の植物で、日本には20種弱が知られているが、「はこべ」と言うと、主に「コハコベ」と「ミドリハコベ」を指す。茎が暗紫色を帯びて全体に小さいのがコハコベで、全体が緑で大きいのがミドリハコベである。「はこべら」として春の七草のひとつにもなっている。因みに「ひよこぐさ」はミドリハコベである。
花は10弁に見えるが、切れ込みが深いために正式には5弁である。道端や畑などに自生し、若い茎葉をお浸しにしたり、小鳥の餌にする。また、乾燥したものは繁縷(はんろう)という生薬にもなり、歯磨き粉などに利用した。
「はこべ」の文献上の初出は「本草和名」(918年)に「波久倍良(はくべら)」と載るもので、語源は「蔓延芽叢(はびこりめむら)」であるという説などがある。
石田波郷は「第二の故郷」と呼んだ東京都江東区に「はこべらや焦土のいろの雀ども」の俳句を詠んだ。その縁で、江東区文化コミュニティー財団が「はこべら俳句大会」を主催してきた。