三秋の季語 蟷螂
いぼむしり・いぼじり
蟷螂目に分類される昆虫の総称で、幼虫から成虫になるまで脱皮を繰り返し、蛹の期間がない「不完全変態」の昆虫。鎌のような前足に特徴がある。その前足は、食物となる昆虫を捕えるためのもので、カッターのように切る機能は有さないが、いかにも切れそうな形態をしていることから、名前の由来は「鎌切」であるとの説がある。
「いぼむしり」の異名もあるが、これは、カマキリでさすれば(あるいは食べれば)イボが取れるという迷信からと言われる。「いぼじり」は「いぼむしり」の転訛と言われるが、体腔内の寄生虫がカマキリの尻から這い出る様が「イボ」のように見える事も、語源のひとつではなかろうか。
日本には10種類ほど生息しており、普通に見られるものにはチョウセンカマキリという和名がついている。他に、オオカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリなどが広く生息している。
カマキリの行動でよく知られるのが共食いであるが、特に交尾中のオスが、メスによって頭から捕食される様子はよく観察される。カマキリのオスは、雌に比べて身体が小さくて細いため、「カマキリ」は、痩せた人を指す言葉にもなっている。
「蟷螂の斧」と言えば、自らの力をわきまえずに敵に立ち向かっていく様を言うが、これは、斉の荘公が乗る馬車にカマキリが立ち向かって行ったという中国の故事からきている。祇園祭の山車「蟷螂山」もこの故事に因み巡行されるが、南北朝時代に足利義詮軍に挑んだ四条隆資の戦いぶりを「蟷螂の斧」と見て、永和2年(1376年)に蟷螂を乗せたのがはじまりといわれる。
【蟷螂の俳句】
かきよせて又蟷螂の草移り 正岡子規