三冬の季語 マスク
「マスク」は、「覆うもの」を表す英語「mask」からきている。この「mask」の語源は、仮面などを表すイタリア語「maschera」、あるいは幽霊を表すラテン語「mascus」にあるという説がある。
マスクにも、スポーツなどで使う特殊マスクの他、医療用や産業用、家庭用などがあるが、俳句で「マスク」と言う場合は家庭用を指し、空気中に存在する有害物質を防御する役割と、自らが持つ病原体を他者に移さない役割を期待されている。
また、顔を覆うことで防寒や保湿の役割も果たす。そのために、寒くて感染症が流行りやすい冬の季語として定着したが、現代では花粉症対策として用いる機会が増え、むしろ春の方がマスク人口が多い傾向にある。さらには新型コロナウィルスの蔓延により、年中手放せない必須アイテムともなった。それでも、俳句で「マスク」を用いる場合、「冬」を念頭に置かなければならない。
マスクの歴史を見ると、17世紀にヨーロッパでペストが流行した時、医師は、防御用に鳥のくちばしに似た仮面を着けたと言われている。日本では、明治初期に炭鉱などで粉塵除けに用いられたものが現代のマスクにつながるものであり、1918年のスペイン風邪で、防疫用として注目を集めるようになった。当時のマスクは、金網に布を貼り付けたような構造をしており、炭鉱などで使用されていたものだったために、汚れの目立たない黒が一般的なものであった。1950年にはガーゼマスクが登場し、主役となったが、現在では使い捨ての不織布マスクが多く用いられている。
新型コロナウィルスの流行で、効用やファッション面などがクローズアップされ、様々な進化が継続中である。
【マスクの俳句】
マスクして我と汝でありしかな 高浜虚子