三春の季語 桜貝
二枚貝綱ニッコウガイ科に「サクラガイ」という種がある。よく似た貝に「ベニガイ」「カバザクラ」「モモノハナガイ」などもあり、これら数センチの大きさのピンク色の二枚貝を総称して「桜貝」という。
日本各地の浅瀬の砂泥底に潜り込んで生活しており、貝殻は、風や波に運ばれて海岸に打ち上げられる。その貝殻を拾うと幸せになれると言われており、よく小瓶などに入れて御守にする。
「桜貝」は春特有のものというわけではなく、色を表す「桜」の名に因んで春の季語になっている。また、潮干狩シーズンである春に目にしやすいということもある。「花貝」「紅貝」などとも呼ばれ、古くから親しまれており、藤原定家(建保百首)に
伊勢の海たまよる浪に桜貝 かひあるうらの春の色哉
の和歌もある。
桜貝などの貝殻が砂浜に打ち上げられる名所を「日本三大小貝名所」として、鎌倉の由比ヶ浜・石川県の増穂浦海岸・和歌山県の和歌の浦が挙げられることがある。