晩夏の季語 氷室
氷を夏まで貯えておく室のことで、山陰の洞穴を利用したり穴を掘ったりした中に、真冬に採取した氷を納め、上に茅などを保冷のために敷きつめる。ここで保管された氷は、旧暦四月一日から九月末日まで天皇に供せられ、これを「氷室御調(ひむろのみつぎ)」と呼んでいた。平城京へ献氷していた氷室神社は、現在も奈良市にある。
日本書紀の仁徳天皇六十二年条には、皇子である額田大中彦が山上より発見した窟について尋ねると、氷室だという回答を得たという話が載る。その氷を天皇に献上すると喜ばれたので、毎年冬季に仕込むようになったという。
氷室がある山は冷涼であるため、桜の開花が遅れる。これを「氷室の桜」として夏の季語にする。
謡曲には、丹波国の氷室山を舞台にした「氷室」の演目がある。
【氷室の俳句】
水の奥氷室尋ぬる柳哉 松尾芭蕉