三冬の季語 牡蠣
ウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属する二枚貝。英語では「oyster(オイスター)」。食用には、冬に旬を迎えるマガキや、夏に旬を迎えるイワガキ(ともにイタボガキ科マガキ属)が用いられ、身が乳白色で高栄養であることから、海のミルクとも呼ばれる(ゆえに、季語で用いる牡蠣はマガキが主)。
雌雄同体の種と雌雄異体の種があり、マガキは雌雄異体。ただし、生殖活動が終了すると同時に中性となり、その後の栄養状態で、再び雌雄に分かれる。
牡蠣自体は、広く世界に分布しているが、生活場所を定めると、ほとんど動くことがない。浜辺などに着床した牡蠣の、その鋭利な殻によって、裂傷を負う者も多い。また、船底などに固着したものは、航行能力を阻害するために、船にとっては大敵である。
古くから世界中で食されてきた牡蠣は、日本でも縄文時代には主要な食材になっていた。貝塚からは、ハマグリに次ぐ量の殻が出て来るという。
また、養殖も古くから行われており、草津村役場が発行した「草津案内」に「天文年間(1532年~1555年)安芸国(広島県)において養殖の法を発明せり」との記述がある。食卓に上がる牡蠣は、そのほとんどが養殖ものであり、60%以上のシェアを持つ広島県や、生食用牡蠣では日本一の宮城県が産地として有名。
ところで、日本で牡蠣が生食されはじめたのは明治時代から。西洋には、牡蠣は例外的に生食されてきた歴史があり、開国とともに、その文化が入ってきたためだと言われている。牡蠣はあたりやすい(食中毒になりやすい)食材であるため、それまでの日本では生食を避ける傾向にあった。
因みに、西洋で食されていたのは、ヨーロッパヒラガキ(イタボガキ科イタボガキ属)。1970年代に入り激減したため、日本産のマガキが導入され、定着したという。
牡蠣(かき)の名は、採取する時に掻き取るところから来ていると言われている。貝類は生殖腺の色を見て雌雄が分かると考えられていたため、全身が白い牡蠣はオスと考えられ、漢字では頭に「牡」がつく。
【牡蠣の俳句】
牡蠣鍋に寡黙の人は寡黙なり 村山せつ