仲春の季語 燕
燕は、スズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される。3月頃から南方より飛来し、4月頃に巣作りを始める。
ツバメは、前年と同じ巣に帰ってくる確率が高いことが分かっているが、必ずしも同じペアで育雛するとは限らない。5月頃から数回に渡って繁殖を行い、8月頃まで育雛が見られる。孵化から巣立ちまでに要する日数は、約20日。
七十二候には、玄鳥至(つばめきたる)と玄鳥去(つばめさる)があり、4月上旬と9月下旬に当たる。なお、南日本では越冬するものも存在し、「越冬燕」と呼ばれる。
日本では、稲の害虫を退治してくれるため、古くから大切にされてきた鳥で、家に巣をつくると縁起が良いと言われている。古くは、雁と入れ替わりに、常世からやってくると言われ、万葉集には大伴家持の歌が載る。
燕来る時になりぬと雁がねは 国おもひつつ雲隠り鳴く
繁殖期のオスのさえずりは、「土食て虫食て口渋い(つちくてむしくてくちしーぶい)」と聞きなす。「燕が低く飛ぶと雨が降る」とも言われるが、これは、雨が降る前に、餌である昆虫が低く飛ぶからである。
古くから親しまれてきた鳥だけに、文化面にも大きな影響を及ぼしている。そのひとつに、最上級の礼服である燕尾服があるが、勿論のこと、燕をまねてデザインされたものではない。裾の割れは、乗馬を考慮したものである。
また、年上の女に養われている若い男を指して「燕」というが、これは、平塚雷鳥と青年画家の恋に由来する。その画家・奥村博史は、別れを決し、「若い燕は池の平和のために飛び去って行く」と手紙を書いた。
燕は、古くは「ツバクラメ」といい、光沢があることをいう「ツバ」と黒いことを指す「クラ」に、鳥類の接尾語「メ」を加えた名前である。
【燕の俳句】
つばめつばめ泥が好きなる燕かな 細見綾子
今来たと顔を並べるつばめかな 小林一茶