季語|桔梗(ききょう)

初秋の季語 桔梗

桔梗の俳句と季語キキョウ科の多年生草本植物で、日本全土に自生するが、自生株は絶滅危惧種に指定されている。秋の七草のひとつ。
6月中旬から9月にかけて花をつけ、その花は「桔梗」で秋の季語となる。花は青紫のものが普通であるが、白や桃色のものもある。つぼみが風船のように見えるため、イギリスでは「balloon flower」と呼ばれる。
根にはサポニンが多く含まれ生薬となり、鎮咳・去痰・排膿作用がある。

古くから和歌に歌われてきた花であり、万葉集にも5首あるが、いずれも「あさがお」として載る。これは、作者不詳で載る

朝顔は朝露負ひて咲くといへど 夕影にこそ咲きまさりけり

に歌われるように、朝だけでなく夕方にも咲いていること、現代に言う「朝顔」が、奈良時代末期に渡来したものと考えられていることからの通説である。
「ききょう」の名は、薬草としての漢名である「桔梗(きちこう)」からの転化である。
桔梗の花をモチーフにした「桔梗紋」は、明智光秀が用いていたことで有名である。安倍晴明が使用した五芒星は、桔梗印と呼ぶ。

【桔梗の俳句】

かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ  久保田万太郎

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季語|冷房(れいぼう)

晩夏の季語 冷房

冷房の俳句と季語エアコンやクーラーで室内の空気を冷やすことを冷房という。ちなみにクーラーは冷却専用機器、エアコンは暖房も兼ねた機器のことである。キヤリア社を設立するウィリス・キャリアによって、冷房用機器が発明されたのは1906年。
日本における冷房は、江戸時代の1773年に、加賀藩の前田候が諸大名を接待するに当たって、雪や氷を使って客間を冷やしたことにはじまるとされる。1960年ころより、空調設備を入れるビルが増加し、1973年のオイルショックを経て空調技術も向上した。

【冷房の俳句】

冷房にゐて水母めくわが影よ  草間時彦

 インターネット歳時記

季語|夕顔(ゆうがお)

晩夏の季語 夕顔

夕がほ(ゆうがお)

夕顔の俳句と季語「夕顔の実」は秋の季語であるが、「夕顔」ではその花を指し、夏の季語となる。ちなみに、秋の季語となる「朝顔」はヒルガオ科サツマイモ属であるが、「夕顔」はウリ科ユウガオ属である。
実の形によって、細長い「ナガユウガオ」と、丸みを帯びた「マルユウガオ」とに大別される。
夏の夕方に白い花を咲かせるところから夕顔といい、翌日の午前中まで咲いている。北アフリカまたはインドが原産地とされ、古くから日本に渡来していたと考えられている。

清少納言は、花はともかくも、鬼灯に似た実を好ましく思わず、枕草子に、

夕顔は花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に、実の有様こそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし。されどなほ夕顔といふ名ばかりはをかし。

とある。このように、かつては卑俗な地位に甘んじていたが、源氏物語で名を上げる。
源氏物語では「夕顔」の巻に、垣根の夕顔に目が留まり出会った女性との話が出てくる。夕顔は、凡河内躬恒の「心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花」を本歌取して和歌を贈り、それに光源氏の返歌がつく。

心あてにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花
寄りてこそそれかとも見めたそかれに ほのぼの見つる花の夕顔

しかし夕顔は、逢引きした某院で魔物に襲われてはかなく死んでしまう。

【夕顔の俳句】

夕貌や妹見ざる間に明けわたる  高桑闌更
夕がほや月の鏡もまたでさく  横井也有

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季語|目白(めじろ)

三秋の季語 目白

目白の季語スズメ目メジロ科メジロ属。全国に分布する留鳥。鶯色の体色で、目の周りが白い。目の周りが白いことから「めじろ」と呼ばれる。雑食だが、蜜を好む。
秋の季語にはなっているが、夏に分類する歳時記もある。俳諧歳時記栞草では、秋八月に分類され、「眼白鳥」とある。「柿を好む」とあることから、秋の季語となったものだろう。その体色から、葉の茂った夏季には見つけにくい。むしろ、新緑前の春季に、椿の蜜を吸いに来るのがよく観察される。梅の蜜も好むため、鶯と間違えられることがある。
声が美しいため、江戸時代から「鳴き合わせ」がよく行われていた。現在では鳥獣保護法により愛玩目的での捕獲・飼育が禁止されている。
和歌山県と大分県では県鳥に指定されており、大分県では「めじろん」というマスコットキャラクターも生まれている。
押し合って枝に並ぶ習性があることから、「目白押し」という慣用句がある。

【目白の俳句】

誰やらが口まねすれば目白鳴く  正岡子規

【目白の鳴き声】
「チーチー」という地鳴きもあるが、花の蜜を吸いに来るときなどは、高く可愛らしい声で鳴く。(YouTube 動画)

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季語|簾(すだれ)

三夏の季語 

葭簀(よしず)青簾(あおすだれ)日除(ひよけ)日覆(ひおおい)

簾の俳句と季語暑さ除けで窓の外や軒先に用いる日除は、夏の風物詩である。
簾は、竹や葦などを編んだものを、吊り下げて用いる。青簾は、青竹を細く割って編まれた簾で、竹の香が立つ。葭簀は、葦を編んだものを軒先などに立て掛けて使用するもの。立簾とも言う。日覆や日除と言った場合には、布で作った覆いも含まれる。

簾の語源は、「簀垂れ」にある。中国では前漢時代に既に存在しており、中国から日本に伝わったと考えられている。
万葉集には額田王の和歌で、近江天皇を思ひてつくる歌として、

君待つとわが恋ひをればわが屋戸の 簾動かし秋の風吹く

がある。現在ではグリーンカーテンとして、植物を日除として使用することも多い。

【簾の俳句】

ほうほうと雨吹きこむや青簾  正岡子規

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季語|萍(うきくさ)

三夏の季語 

浮草(うきくさ)

萍の俳句と季語池や水田などの水面を覆う水草で、根は水底に届かず、水面を漂う。別の呼び方に「根無草」もある。
近年大繁殖が問題となっている外来種「ホテイアオイ」なども「浮草」と呼ぶことがあるが、通常はウキクサ属に分類される「ウキクサ」をいう。5㎜ほどの小さな葉を、流れのない水面に浮かべ、夏に目立たない花をつける。「俳諧歳時記栞草」夏の部「五月」に「萍の花」があり、「白花あり」とあるが、ここにいう「萍」はスイレンの一種である「ヒツジグサ」のことだと考えられる。

万葉集のころは「浮きまなご」と呼ばれていたと考えられ、作者不詳の和歌に

解き衣の恋ひ乱れつつ浮きまなご 生きても我はあり渡るかも

がある。また、能因歌枕に「うきくさとはあだに浮きたることにたとふ」とあり、和歌の世界では「憂き」「浮く」に掛ける。古今和歌集には、壬生忠岑の和歌で

たぎつ瀬に根ざしとどめぬ浮草の 浮きたる恋も我はするかな

がある。

【萍の俳句】

雨ならず萍をさざめかすもの  富安風生

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季語|金亀虫(こがねむし)

三夏の季語 金亀虫

金亀子(こがねむし)ぶんぶん

金亀虫の俳句と季語コガネムシは黄金虫とも書き、鞘翅目コガネムシ科に属する甲虫である。同じコガネムシ科に属し、金属光沢のあるものに「カナブン」がいるが、一般に金亀虫と呼ばれているものとカナブンの生態は大きく異なる。金亀虫の頭部は丸っぽいが、カナブンの頭部は四角い。金亀虫の成虫は葉を食して生活しているが、カナブンは樹液をすする。金亀虫の幼虫は植物の根などを食す害虫であるが、カナブンは腐葉土を食して発酵させる益虫である。
俳諧歳時記栞草には「大和本草」の引用で、「五六月、草蔓に生ず。南人収て以粉に養ふ。婦人、白粉の器中に入おく。雄は緑色、光あり。雌は灰色、光なし。形状は飛蛾に似て長し。翼あり。額に両角ありて長し。六足あり。俗、玉虫といふ。」とある。

コガネムシと言えば、野口雨情作詞の童謡に「黄金虫は金持ちだ 金蔵建てた蔵建てた」と歌われるが、この童謡のコガネムシは、チャバネゴキブリのことではないかと言われている。

【金亀虫の俳句】

金亀虫擲つ闇の深さかな  高浜虚子

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季語|氷水(こおりみず・こおりすい)

三夏の季語 氷水

削氷(けずりひ)かき氷(かきごおり)夏氷(なつごおり)氷店(こおりみせ)

氷水の季語と俳句「氷水」と言えば、一般的には飲み水に氷を入れて冷たくしたものを言うが、俳句の世界では削氷に砂糖水やシロップをかけた食べ物のことを主に指す。
日本で最も古い記述は、「枕草子」にあると考えられており、「あてなるもの(上品なもの)」に「削り氷にあまずら入れて、あたらしきかなまりに入れたる」とある。当時の「氷水」は、高貴な者にだけ味わえる夏の楽しみで、氷室で夏まで保存されていた氷が提供された。
その、氷室の記述は日本書紀(仁徳紀)にも見られ、皇族である額田大中彦皇子が都祁(現在の奈良県)で狩りの最中に発見したことが記されている。
明治になった1869年には、横浜の馬車道に、日本で最初の氷水店がオープンした。1883年に東京製氷による人工氷の生産が始まると大衆的な飲食物となり、昭和初期に氷削機が普及し一般家庭にも広まった。
これら、氷水(かき氷)を食す文化は日本独特のものではなく、古代ローマや中国にも存在した。

「かき氷」の名前は、東京で「ぶっかきごおり」と呼ばれていたことに由来する。関西では「かちわり」と呼ばれ、現在でも甲子園名物として残る。かき氷を売っている店は氷旗を掲げていることが多いが、「波に千鳥」に氷の文字をあしらったデザインである。
戦前のかき氷は、砂糖をふりかけた「雪」、砂糖蜜をかけた「みぞれ」、小豆餡をのせた「金時」が定番だった。現在では、「氷蜜」と呼ばれるフルーツ味などのシロップをかけてつくるものが一般的である。

【氷水の俳句】

午下二時のしじまありけり氷水  松根東洋城

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季語|仏法僧(ぶっぽうそう)

三夏の季語 仏法僧

木葉木菟(このはづく)

仏法僧の俳句と季語鳥綱ブッポウソウ目ブッポウソウ科に分類されるブッポウソウは、夏鳥として東南アジアから飛来し、本州から九州で繁殖する。「森の宝石」とも呼ばれる美しさから、長らく「ブッポウソウ」と鳴くと信じられてきたが、1935年の日本放送協会名古屋中央放送局のラジオ取材で、「ブッポウソウ」と鳴くのはコノハズクであることが証明された。そのため、仏法僧には「姿の仏法僧」と呼ばれるブッポウソウと、「声の仏法僧」と呼ばれるコノハズクが存在する。
コノハズクは、フクロウ目フクロウ科に分類され、5月から6月にかけて、奥深い山中で夜間に鳴く。木菟は冬の季語になるが、こちらは青葉木菟とともに夏の季語となるフクロウである。

ちなみに「仏法僧」とは仏教における「仏・法・僧」の三宝のことで、聖徳太子の「十七条憲法」にも、「篤敬三宝 三宝者佛法僧也」とある。三宝に帰依し授戒することで、仏教徒となることができる。

【仏法僧の俳句】

杉くらし仏法僧を目のあたり  杉田久女

【仏法僧の鳴き声1】
声の仏法僧であるコノハズクの鳴き声。「ブッポウソウ」と聞きなす。1935年のブッポウソウを探り当てたラジオ放送には、荻原井泉水も立ち会っている。(YouTube 動画)

【仏法僧の鳴き声2】
こちらが本家仏法僧であるブッポウソウ。夜行性であるコノハズクとと違い、昼間に活動する。(YouTube 動画)

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季語|冷酒(れいしゅ・ひやざけ)

三夏の季語 冷酒

冷し酒(ひやしざけ)

冷酒の俳句と季語冷やして飲む酒のことで、主に日本酒に関していう。近年、クリアな味わいの吟醸酒が人気になるとともに、冷やして日本酒を飲むことも珍しくなくなってきた。ただし「冷や」と言うと、普通は常温の日本酒を指し、「燗酒」と区分するために用いられる言葉である。「冷酒」とは別物で、夏の季語とはならない。

「冷酒」にも、その温度帯に応じて呼び名があり、15度くらいを「涼冷え(すずびえ)」、10度くらいを「花冷え」、5度くらいを「雪冷え」と呼ぶ。また、マイナス10度に過冷却した日本酒を、グラスに注ぐ衝撃で瞬間的にシャーベット状に凍らせる、「みぞれ酒」もある。氷を浮かべて飲むことも提案されており、酒造が近年力を入れている夏酒の楽しみ方にも幅が出てきた。

【冷酒の俳句】

一盞の冷酒に命あつきかな  角川源義

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