初秋の季語 踊
俳句で「踊」と言えば、盆踊りのことで秋の季語となる。盆に帰ってきた先祖の霊を慰めるための行事である。
俳諧歳時記栞草の「踊」の項には、「懸踊」「念仏踊」「題目踊」「燈籠踊」「伊勢踊」「木曾踊」「小町踊」「七夕踊」が載る。
平安時代に空也上人が始めた、死者を供養するための踊念仏が、盂蘭盆会の行事と結びつき、盆踊りになったと言われている。原初の盆踊りは、死者に扮して頬被りをし、新盆を迎える家の前で輪を作って踊ったという。本来は、旧暦7月15日の晩に満月の下で盆踊りを行い、16日に精霊送りをした。
時代が下ると、男女の出会いの場としての性格を帯び、風紀を乱すとして、取締り対象となることもあった。
「踊り」は、「尾」と、操るの意味の「取る」からなるという説がある。犬の尾をイメージした躍動感が、「おどる」なのかもしれない。
因みに、「踊」は跳躍運動をもとにした動きで、「舞」は旋回運動をもとにする動きだと言われている。
現在では、全国各地で盆踊りが開催されている。中には阿波踊りのように、一地方で開催されていたものが全国に広がっていった例もある。
踊りと言えば、出雲阿国の歌舞伎踊りも知られるが、こちらは現在の「歌舞伎」に受け継がれている。阿国は、出雲大社勧進のために、「ややこ跳」を行ったとされる。
【踊の俳句】
六十年踊る夜もなく過しけり 小林一茶